最新記事

南米

「格差地獄」のベネズエラ──富裕層は空中レストランからスラム街を見下ろしながら食事を楽しむ

A Hell of Inequality

2023年2月5日(日)10時50分
トニー・フランジーマワド
デモ

賃上げを求めるデモ参加者の手に「飢え」と書かれた箱が(カラカス)LEONARDO FERNANDEZ VILORIAーREUTERS

<マドゥロ大統領の「ドル化」政策は一部で成果を上げ、どん底を脱したが、その副作用で「社会的貧困」が拡大。懸念されるのは教育崩壊がつくる、今後の貧困>

2022年11月、ベネズエラの首都カラカスのきらびやかな商業地区ラス・メルセデスに、ニューヨークのサックス・フィフス・アベニューを思わせる高級百貨店「アバンティ」がオープンした。

この店には、グッチやヴェルサーチなど高級ブランド品がずらりと並ぶ。11万ドルもするサムスン製のテレビは、すぐに入荷待ちリストができた。

ベネズエラでは国民の大半が貧困に苦しんでいるのに、カラカスでは贅沢なレストランやブティックのオープンが相次いでいる。テーブルごとクレーンで上空に浮かべ、美しい夜景と共に食事を楽しむレストランまで登場した。

ベネズエラはウゴ・チャベス前大統領による国家介入型の経済政策によって、戦時を除けば世界最悪レベルの経済破綻を経験した。

彼の後に就任したニコラス・マドゥロ現大統領は、チャベス時代の従来型社会主義の政策とは距離を置き、緩やかな経済自由化を実施。多くの輸入品の関税を撤廃し、物価統制や為替管理を廃止したほか、米ドルを事実上の取引通貨とする経済の「ドル化」を進めた。

その結果、ベネズエラ経済は昨年、9年ぶりにプラス成長に転じた。インフレ率は依然として高いものの、ハイパーインフレと食料危機の波はおおむね過ぎ去った。

だが、全ての国民がその恩恵を受けているわけではない。シンクタンク「アノバ政策研究所」のエコノミスト、オマー・ザンブラーノは、むしろ経済改革の副作用によって、この国は「格差地獄」と化したと指摘する。

こうした経済の動向は、同国のアンドレス・ベーリョ・カトリック大学が昨年11月に発表した全国生活条件調査(ENCOVI)にも表れている。

これによれば、収入が貧困ラインを下回る世帯の割合は21年の90.9%から昨年は81.5%に減少した。調査責任者の1人アニツァ・フレイテスは、正規雇用者が増え、民間部門の賃金が全体的に上昇したことが一因と分析する。

一方で、調査は厳しい現実も浮き彫りにした。ベネズエラが世界で最も不平等な国の1つだということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

サムスン電子、第1四半期営業益は前年比8倍増見込み

ビジネス

午前のドルは159円後半で売買交錯、見極め続く イ

ビジネス

実質消費支出、2月は3カ月連続マイナス 中東紛争で

ワールド

26年銅市場は供給過剰の見通し、米ゴールドマンが価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 6
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 9
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 10
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中