最新記事
トラベル

過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡の国際空港はどこ?

The Airport That Hasn't Lost a Single Bag in 30 Years

2024年5月9日(木)20時39分
カルロ・ベルサノ

空の旅に荷物紛失の不安は付きものだが? Maurizio Milanesio-shutterstock

<世界の大空港ではほとんどあり得ない記録、いかにして達成されたのか>

ある国際空港が、アメリカの空港にはほとんど不可能な偉業を達成している。開業から30年、乗客が預けた荷物をひとつも紛失していないのだ。

日本の関西国際空港は、港湾都市の大阪と、近隣の神戸ならびに京都を訪れる人を出迎えており、日本有数の忙しい空港でもある。開業したのは1994年9月で、その運営力と効率性がたびたび称えられてきた。しかし、同空港が数ある主要国際空港のなかでも飛び抜けているのは、その完璧な荷物取扱い実績だ。乗客の荷物の紛失や破損の申し立てに苦慮しているハブ空港は見習うべきだろう。

【写真特集】むしろ足止め歓迎! 世界の風変わり空港9選

だが、これさえやればいい、という秘訣があるわけではない。同空港を運営する関西エアポートの広報担当、高西健司は、本誌の取材でそう語っている。

 

関西国際空港は、飛行機が駐機してから15分以内に、乗客の最初の荷物をベルトコンベヤーに載せることを目標にしている。さらにその際は、スーツケース一つひとつの持ち手を外側に向けて、乗客が手に取りやすいようにしている、と高西は話す。

「手荷物が雨で濡れていれば、水をふき取ってから」乗客に返すそうだ。ベビーカーやスポーツ用品など特殊な手荷物は乗客に手渡しすることで、荷下ろし中に破損しないよう配慮している。

高西によると、関西国際空港は年間乗客数が最高3000万人、取扱う手荷物は年間1100万個にのぼる。この数字は、大阪・関西万博が開催される2025年には大幅に増えるとみられる。この国際博覧会は6カ月にわたって開催され、関西地区にはおよそ2800万人の来場者が押し寄せる見込みで、大規模な改修工事が行なわれている。

「世界中から多くの人が関西へとやってくるので、より丁寧で正確な業務遂行を目指します」と高西は言う。

「地盤沈下」との戦い

関西国際空港はこれまで、食の選択肢と従業員対応で、世界屈指の評価を受けてきた。航空サービス格付企業のスカイトラックスは、手荷物の取扱いについて関西国際空港を高く評価しており、今年を含めて8回も同部門1位に選出している。

その対極にある空港のひとつが、米ニューヨーク市のジョン・F・ケネディ国際空港だ。フォーブスは2023年、手荷物の紛失と破損の実績が米国内で最悪な空港として、ジョン・F・ケネディ国際空港を挙げている。

関西国際空港にも問題はある。とりわけ深刻なのは、この空港が驚くべきスピードで地盤沈下をしていることだ。関西国際空港は、大阪湾に浮かぶ2つの人工島の上に建設されており、開業当初は驚異的な工学技術だとされた。ところがそれ以降、空港は38フィート(約11.6メートル)沈下している。予想をはるかに上回る数字だ。そして、2050年ころにはさらに13フィート(約4メートル)沈下し、海面と同じ高さになると予想されている。

すでに台風の通過時に滑走路やターミナルが浸水したことがあり、迫りくる海から人工島を守るべく、多額を投じて強靭化が進められている。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月24号(2月17日発売)は「ウクライナ戦争4年 苦境のロシア」特集。帰還兵の暴力、止まらないインフレ。国民は疲弊し、プーチンの足元も揺らぐ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イタリア、パラ大会でのロシア・ベラルーシ国旗使用容

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、2月はマイナス12.2に

ビジネス

米12月貿易赤字703億ドルに拡大、25年モノの赤

ビジネス

米新規失業保険申請、2.3万件減の20.6万件 予
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 3
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政余地を狭め、財政リスクを高める」
  • 4
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 5
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 6
    カンボジア詐欺工場に「人身売買」されたアフリカ人…
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    アイスホッケーの試合中に「銃撃事件」が発生...「混…
  • 9
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 10
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 6
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 7
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 10
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中