最新記事
東南アジア

「カワイイおじさん」インドネシア新大統領プラボウォの黒すぎる過去とその正体

A Cute Man’s Dark Past

2024年2月19日(月)17時26分
ジョゼフ・ラッチマン

残虐な元特殊部隊員?

プラボウォの名前が知られるようになったのは、インドネシアが1970年代に、ポルトガルの植民地支配から脱した東ティモールに侵攻したときだ。

特殊部隊の一員だったプラボウォは、東ティモールの英雄ニコラウ・ロバトの殺害に関与したとされる。

さらに西パプアでも独立派の虐殺に関わったとされるが、本人は一貫して否定している。

その後、プラボウォはスハルトの娘と結婚して政界でも知られる存在となり、一部ではスハルトの後継者と見なされるようにもなった。

98年にスハルトの独裁体制が崩壊したとき、プラボウォは民主活動家23人の拉致に関与したとされており、自ら権力を掌握しようとした可能性がある。

その後、インドネシアに民主主義体制が確立すると、プラボウォは一時国外生活を強いられたが、やがて政界に復帰。

2004年には大統領候補指名を目指し、09年には副大統領候補となり、14年と19年に大統領候補としてジョコと戦った。

その2回ともジョコに敗れたが、特に19年選挙では選挙不正を主張して敗北を認めず、死者を出す暴動を引き起こした。

このときジョコが、プラボウォを国防相に登用することで事態の収拾を図ったことは、多くを驚かせた。

これを機に、プラボウォは「ジョコの後継者」へとキャリアチェンジを図り、多くの若い有権者にとっては「カワイイおじさん」へとイメージチェンジを果たした。

それまでのプラボウォは、馬にまたがって選挙集会に登場するなど、強面(こわもて)のナショナリストのイメージを前面に押し出していた。

選挙演説も、外国の破壊勢力について警告するといった内容が多かった。

イメージ変更が大成功

ところが今回、プラボウォはしつこいくらいジョコに対する忠誠を示し、ジョコの政策継続を約束した。

かつてはジョコのことを、隠れ共産主義者で中国系で無神論者でキリスト教徒だと中傷していたから、相当な日和見主義者と言っていい(インドネシアではジョコ含め国民の大多数がイスラム教スンニ派)。

もちろん今回も、遊説中に外国人がインドネシアの富を盗み、駄目にしようとしていると主張するなど、ナショナリスト的な側面をのぞかせたときもあった。

だが、今回の選挙でプラボウォ陣営が何よりも強調したのは、「グモイ(かわいい)」イメージだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ブラジル大統領選、ボルソナロ氏が長男出馬を支持 病

ワールド

ウクライナ大統領、和平巡り米特使らと協議 「新たな

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中