最新記事
米政治

ドナルド・トランプの大統領選、「最大の敵」は連邦最高裁...「自分だけは特別」の主張は認められるか

Trump v. Supreme Court

2024年2月16日(金)16時02分
リチャード・ヘイセン(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授〔法学〕)
ドナルド・トランプ前大統領と米連邦最高裁判所

2000年大統領選の行方を決めた最高裁判決は今でも議論の的になっている PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY JUSTIN SULLIVANーGETTY IMAGESーSLATE, LIBRARY OF CONGRESS, AND GETTY IMAGES PLUSーSLATE

<次期大統領になる気が満々のドナルド・トランプが唱える「自分は例外扱いされるべき」を、米最高裁はどう裁くのか?>

アメリカ大統領選の行方を決める上で、米連邦最高裁判所が再び重大なカギを握ることになりそうだ。前回最高裁が大きな注目を集めたのはもちろん、2000年大統領選。ジョージ・W・ブッシュ(当時はテキサス州知事)とアル・ゴア(当時は副大統領)が大接戦を繰り広げ、フロリダ州で票の再集計が行われた。その有効性をめぐる争いが最高裁まで持ち込まれた。

判例主義を取るアメリカの司法制度では、最高裁の判決はその後の訴訟に大きな影響を与える。ところがこのとき最高裁は、問題となっていたフロリダ州の集計を合憲と認める(これによりブッシュの勝利が確定した)に当たり、「この見解が適用されるのは本件に限定される」という断りを入れた。

11月に投開票が行われた後、1月初めに議会で各州の投票結果を承認する手続きが行われるまでに判決を下す必要があったとはいえ、判例を確立するはずの最高裁が「一日乗車券」のようなその場限りの判決を下したと、その後長年にわたり批判を浴びる原因の1つとなった。

それと似たようなことが、今年も起きる可能性がある。

現在、最高裁が判断を迫られている2件の裁判は、今秋の大統領選に出馬を表明しているドナルド・トランプ前大統領が、再び大統領の座に返り咲けるかどうかに決定的な影響を与えるだろう。

「俺様は例外」を認めるか

問題となっている2件の下級審判決の1つは、コロラド州最高裁が昨年12月に下したもの。トランプが20年大統領選の結果(敗北)を覆すため、21年1月にこの結果を承認しようとしていた米議会を襲撃するよう暴徒を差し向けたことや、襲撃を鎮圧する措置を取ることを拒否したことは「反乱」に当たるとし、そのような人物が再び公職に就くことは合衆国憲法修正14条第3項により禁じられているという判決を下した。

この判決が連邦最高裁でも維持されれば、トランプは11月の本選はもとより、現在進行中の共和党予備選の少なくとも一部の州で選択肢から外される可能性があり、7月の共和党全国大会で指名候補の座を勝ち取ることは著しく困難になるだろう。

もう1件は、実のところ本稿執筆時点ではまだ最高裁に持ち込まれていないが、ほぼ間違いなく最高裁に判断が委ねられるだろう。これは前述の連邦議事堂襲撃事件に関連して、トランプが国家に対する詐欺行為などで起訴された刑事事件だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中