最新記事
米政治

ドナルド・トランプの大統領選、「最大の敵」は連邦最高裁...「自分だけは特別」の主張は認められるか

Trump v. Supreme Court

2024年2月16日(金)16時02分
リチャード・ヘイセン(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授〔法学〕)

トランプはどちらの裁判でも、事実上、自分だけは例外で、過去に何をしても再び大統領になれるし、刑務所送りは逃れられると主張している。

だが、その理由付けはかなり弱い。例えば、コロラド州最高裁判決を不服とする上告審の申立書で、トランプ側は、大統領は修正14条第3項で再任を禁止される「合衆国の高官」に当たるのか、そして大統領職は「合衆国の」公職を意味するのかといった細かな点を争っている。

こうしたトランプ陣営の戦略を、ジョージタウン大学法科大学院のマーティ・リーダーマン教授は、「ここでいう大統領職が合衆国の公職でないとしたら、どこの話だというのか。オハイオか? フランスか?」と皮肉っている。

「歴代大統領のうち自分とワシントンだけが例外」

リーダーマンは、トランプの2つの主張を整理してくれている。まずトランプは、大統領職は「合衆国の」公職ではないので、修正14条第3項の適用はないという。

第2に、同項によれば「過去に連邦議会の議員、合衆国の高官、州議会の議員」などとして「合衆国憲法の擁護を宣誓した者」が対象となるが、トランプはこれに該当しないという。確かに大統領に就任する人のほとんどは、それより前に州知事や議員などの公職に就いたことがあり、そのとき憲法を守る宣誓をしているが、ビジネスマン出身のトランプにはその経験がない。

トランプは最高裁に提出した書面で、こうした例外扱いが認められるのは、自分だけだろうと認めている。「歴代大統領46人のうち、ジョージ・ワシントンとドナルド・トランプを除く全員が、憲法修正条項が定める前職に就いていたため、第3項の適用を受ける」というのだ。

トランプは、ワシントン連邦地裁に起訴された刑事訴訟でも同じような例外扱いを主張している。

この裁判は3月初旬に公判が予定されていたが、トランプは大統領として行ったいかなる公的な行為も(選挙結果を転覆する試みでさえも)刑事責任を免れると主張して、その部分だけ先に連邦控訴裁判所の判断を仰いだため、その判断が下されるまで公判はストップすることになった。

ただ、控訴を受けたワシントン地区連邦控訴裁判所は2月6日、たとえ選挙介入が公務の一部だったとしても、刑事責任を問われることは免れないという判決を下し、トランプの最高裁への上告期限を11日までと設定した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、ガザ病院攻撃に遺憾の意 「目標はハ

ワールド

中国は200%の関税に直面、磁石供給しなければ ト

ワールド

金正恩氏と年内に会談したい=トランプ氏

ビジネス

米7月新築住宅販売0.6%減65.2万戸、住宅市場
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中