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スマートニュース・メディア価値観全国調査

メディア接触の新潮流...「ニュース回避傾向」が強い層の特徴とは?

2024年2月9日(金)17時00分
大森翔子(法政大学社会学部専任講師)
(写真はイメージです) Martin Rettenberger-Shutterstock

(写真はイメージです) Martin Rettenberger-Shutterstock

<大規模世論調査「スマートニュース・メディア価値観全国調査」が明らかにした日本の「分断」。連載第5弾では、SNSを中心にメディア接触する層の特徴を、法政大学社会学部専任講師・大森翔子氏が解説する>

■本連載の記事一覧はこちら

2021年、総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」は、平日におけるインターネット平均利用時間がテレビの平均利用時間を上回ったことを報告した。さらに、2023年度の同報告書では、休日におけるインターネット平均利用時間も上回ったことが報告されている。

インターネット利用率の向上、そして近年におけるOTT(オーバー・ザ・トップ [Over The Top]:インターネットを介して提供されるメディアサービス)など各種インターネットサービスの伸長により、人々のメディア環境は「インターネット中心」のものになりつつある。それでは、情報接触の選択肢が爆発的に増えた今日において、日本における人々のメディア接触環境はどのような状況にあるのか。メディア接触に関連する質問を豊富に聴取した「スマートニュース・メディア価値観全国調査(SmartNews Media, Politics, and Public Opinion Survey)」(以下、SMPP調査)のデータから読み解いてみよう。

人々のメディア接触状況の現在:メディア情報環境の差異

SMPP調査では、人々のメディア接触に関して「新聞」、「テレビ」、「インターネット」メディアそれぞれについて、「あなたが、ふだんよく読む/見る」媒体を質問し、複数回答形式でデータを得た。本稿では、この豊富な回答項目のデータを生かし、人々のメディア接触環境の差異──メディア接触パターン──を見出すことにしたい。

人々のメディア接触のパターンを明らかにするため、「潜在クラス分析」という統計分析の手法を使い分析した結果を紹介する。今回の分析では、5つのパターン(以降「クラス」と呼ぶ)が析出された。下の図では、解釈しやすいように各クラスにおける各メディア媒体(新聞/ハードニュース/ソフトニュース/ニュースサイト・アプリ/SNS/無料動画/有料動画/掲示板)への接触回数の予測値を算出したものを示す。

SMPP調査(郵送)における回答者のメディア接触パターン
大森1.png

析出されたクラスを説明すると、クラス1に所属する人々は新聞・テレビ系(ハード・ソフトニュース)への接触は多く、インターネットメディアへの接触率はかなり低い。

クラス2に所属する人々は、クラス1同様に新聞・テレビ系(ハード・ソフトニュース)への接触が多く、加えてニュースサイト・アプリへの接触率も高いグループである。この2グループは、伝統メディアへの接触を軸にしていると解釈できそうだ。

クラス3は新聞・テレビ系、インターネットメディア、いずれの接触も有しているが、どれも「高い」接触率というわけではないグループである。

特に注目したいのは、クラス4と5である。クラス4に所属する人々は、SNSへの接触率が最も高いが、新聞・テレビ系への接触も行うグループである。一方、クラス5に所属する人々は、クラス4と同様にSNSへの接触率が最も高いが、新聞・テレビ系(ハード・ソフトニュース)への接触率はかなり低い。

つまり、SMPP調査データから分析をした人々のメディア接触パターンは、伝統メディア中心型・インターネットメディア中心型に分けることができるが、伝統メディア中心型でも、クラス2所属者のようにニュースサイト・アプリへの接触率が高い人々が存在する。さらに、クラス4・5にようにインターネットメディアを中心的に接触する人々においても、パターンは細分化されているのである。

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