最新記事
スマートニュース・メディア価値観全国調査

首相への好悪から見る「分極化の起点」

2024年2月2日(金)17時00分
前田幸男(東京大学大学院情報学環教授)
安倍晋三元首相 Sasa Dzambic Photography-Shutterstock

REUTERS-Kimimasa Mayama KM / Sasa Dzambic Photography-Shutterstock / Alexandros Michailidis-Shutterstock

<大規模世論調査「スマートニュース・メディア価値観全国調査」が明らかにした日本の「分断」。連載第2弾では首相の好き嫌いは与野党の好き嫌いとどう関係するのか、東京大学大学院情報学環教授・前田幸男氏が解説する>

■本連載の記事一覧はこちら

いわゆる55年体制の時代、内閣支持率は大きな関心の対象ではなく、内閣の命運は自民党派閥の力学で決まっていた。例えば、海部俊樹内閣は派閥力学により退陣を余儀なくされたが、時事通信の調査で最終支持率は44.2%と高いものであった。

内閣支持率が重要になるのは、選挙制度改革と中央省庁再編で、首相を支える制度基盤が強化されてからである。小泉純一郎内閣になると、「小泉劇場」という言葉が流布し、内閣支持率の高さが話題になった。

複数の報道機関が世論調査の方法を、伝統的な「訪問面接調査」から、即時に調査を実施し、即時的な報道が可能になる「ランダム・ディジット・ダイアリング法(RDD法)」に切り替えたのは、奇しくも、小泉政権期と重なっている。それ以降、内閣支持率の推移は、メディアや世間において多くの関心を集めてきた。

歴代首相に対する評価

今回、「スマートニュース・メディア価値観全国調査(SmartNews Media, Politics, and Public Opinion Survey)」(以下、SMPP調査)における新しい取り組みのひとつは、歴代の首相に対する「好き嫌い」をまとめて尋ねたことである。好き嫌いは支持そのものではないが、過去の内閣に対して、「あなたは〇〇内閣を支持していましたか」と記憶にもとづいた回答を求めるより、有権者の首相評価を回顧的に尋ねる上では、有益な方法だと考えている。

対象となるのは、小泉から岸田文雄にいたる歴代9人の首相である。具体的には、「歴代の首相についてご意見をお聞かせください。同じく、0を『とても嫌い』、10を『とても好き』とします。あなたの好き嫌いはどこに位置しますか。それぞれについて1つずつお選びください」と尋ねている。11点尺度の分布を、各首相についてグラフにしたのが、図1である(縦軸は%)。

図1
前田図1_ver2.jpg

グラフの形状からは、有権者が明確に歴代首相を区別した上で、好き嫌いの感情を抱いていることがうかがえる。群を抜いて好かれているのは小泉(平均6.6点)であるが、安倍晋三への好感度は、菅義偉への好感度と並び、その次に高い(5.4点)。その他の首相は、平均値が中間を意味する5点よりも小さいので、どちらかといえば嫌われていることになる。

東京アメリカンクラブ
一夜限りのきらめく晩餐会──東京アメリカンクラブで過ごす、贅沢と支援の夜
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、ガザ停戦交渉開始を指示 人質解放と

ビジネス

米中古住宅販売、7月は2%増の401万戸 予想上回

ワールド

米司法省、クックFRB理事を調査へ パウエル議長に

ワールド

再送-米EU、関税15%で共同声明 自動車も近く引
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精神病」だと気づいた「驚きのきっかけ」とは?
  • 2
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 5
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 6
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 7
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 8
    米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓…
  • 9
    ドンバスをロシアに譲れ、と言うトランプがわかって…
  • 10
    フジテレビ、「ダルトンとの戦い」で露呈した「世界…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中