最新記事
中台関係

2024年、中国による「台湾侵攻」はあるか?中国の行動を予測する2つのポイント

A PAPER TIGER

2024年1月16日(火)18時47分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

トラを甘やかす必要性を感じず

独立派の李登輝が勝利した96年総統選の前に、中国は台湾周辺で軍事演習を行い、ミサイルを発射したが、何も起こらなかった。

2022年に当時の米下院議長ナンシー・ペロシが台湾を訪問した後にも、中国は過去最大の軍事演習を行ったが、このときも大きなことは起こらなかった。

中国共産党は、自国の主権が及ぶ中国大陸と香港ではどう猛なトラだが、台湾との関係では張り子のトラにすぎない。

世界の民主主義国が台湾への揺るぎない支持を表明し続ければ、この点は変わらないだろう。

西側諸国の首脳たちは以前、中国のはったりを受けて立とうとしなかった。

自国企業の対中ビジネスの足を引っ張りたくないと考えたためだ。

しかし、中国経済の状態が悪化し、投資家が大挙して中国市場から引き揚げるようになり、西側諸国の政府はこの張り子のトラを甘やかす必要を感じなくなった。

12月末、今回の総統選の立候補者たちが参加したテレビ討論会で、こうした情勢の変化を浮き彫りにする出来事があった。

野党候補の1人である柯文哲(コー・ウェンチョー)前台北市長が民進党候補の頼清徳(ライ・チントー)副総統に、「あなたが言う台湾独立の考え方を現実的にどのように前進させるのか」という問いをぶつけた。

独立に前のめりの発言を引き出すことで、中国政府に頼を攻撃させ、米政府にも現状維持を揺るがすトラブルメーカーとして頼を批判させようと考えたのだろう。

頼はこう回答した。

「台湾独立とは、台湾の主権が台湾の2300万の人々だけに属し、中台が互いに従属しないことを意味する。私はこの現状を維持して台湾を守るために、最善の努力をする」

頼は、台湾の政治家なら誰も異論を挟めない現実を述べると同時に、これまでタブーだった台湾独立をその現実と巧みに結び付け、独立という考え方を明確に正当化したのだ。

中台の力関係はより拮抗

中国は戦争の脅しをちらつかせていたが、今回、米政府の姿勢は全く揺らがなかった。

国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官も中国に対して、総統選に干渉しないよう直ちに警告した。

柯の戦術は空振りに終わり、台湾独立をめぐってアメリカと台湾が期せずして足並みをそろえる形になった。

これは、中国経済が絶好調に見えていたクリントン政権、ブッシュ(息子)政権、オバマ政権の時代には到底考えられなかったことである。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中