最新記事
アフリカ

次々にアフリカ諸国から追い出されるフランス...見透かされる「搾取を続ける宗主国」のダブルスタンダード

French Era Ends in Africa

2023年10月4日(水)18時28分
トム・オコナー(外交問題担当)
ニジェールの駐留仏軍

駐留仏軍はニジェール国民の反発を招いた(首都ニアメーの仏空軍基地、2021年) AP/AFLO

<旧植民地に反仏感情が高まって駐留部隊の引き揚げが相次ぐ。大国の戦略は根本的な再検討を迫られている>

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、西アフリカのニジェールを支配する軍事政権の要求に従い、同国からフランスの大使を帰国させ、駐留部隊を撤収する決定を下した。これは、不安定な地域で影響力を高めようとしているアメリカの戦略への警告になるかもしれない。

ニジェールでは7月、大統領警護隊兵士らがクーデターを起こしてモハメド・バズム大統領を追放し、祖国防衛国民評議会(CNSP)を樹立。さらにフランスのシルバン・イッテ駐ニジェール大使を、国の秩序に脅威をもたらす旧宗主国の使節と非難して国外退去を要求した。マクロンはこのとき、軍政の要求を拒否する姿勢を取った。

だが軍政がイッテの外交特権を剝奪して数週間が過ぎた9月24日にマクロンは、大使は間もなくニジェールを離れ、約1500人の駐留部隊も年内に撤収すると発表した。

今回の撤収は、フランスがアフリカで見せた新しい動きというわけではない。既にフランスは、ブルキナファソや中央アフリカ共和国、マリなどから相次いで手を引いている。背景にあるのは、一部のアフリカ諸国で反フランス感情が高まっていることだ。

一方のアメリカはニジェールに約1100人の部隊の駐留を続け、アフリカで米軍のプレゼンスを高めようとしている。だが英コンサルティング会社オックスフォード・アナリティカのナサニエル・パウエルは、米政府はフランスの撤収の決断に留意すべきだと警告する。

「サヘル地域(西アフリカのブルキナファソ、マリ、ニジェールなどを含む地域)でのフランスの失敗が特にアメリカにもたらすメッセージは、腐敗した非合法な政権を頼りに安全保障政策を成功させようとしても大きなリスクを伴うということだ」と、パウエルは言う。「そうした政権が倒れると、支援していた国は腐敗政権に加担したと見なされ、影響力を失いかねない」

ブルキナファソとマリからのフランスの撤収も、軍事クーデターの後だった。8月30日にクーデターが勃発した中部アフリカのガボンでも、フランス軍の駐留継続が問題になっている。

ニジェールのクーデターは、とりわけ影響が大きいかもしれない。バズムが追放される前、ニジェールはアルカイダやイスラム国(IS)の関連組織を含む過激派が活動するサヘル地域で、フランスとアメリカのテロ対策活動の拠点となっていた。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中