最新記事
注目ニュースを動画で解説

誰が批判している? 処理水をめぐる日本叩きに見る中国人「反日感情の深層」とは【注目ニュースをアニメで解説】

2023年9月14日(木)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
日本をたたく中国人の心理

Newsweek Japan-YouTube

<処理水放出で怒り狂う中国人と、事実を無視して庶民の怒りに火を付ける中国政府の動機について考察したアニメーション動画の内容を一部紹介>

事実を無視し、メディアを統制してまで庶民の怒りに火を付ける──中国政府は福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を激しく批判しているが、いつもの日本たたきとはやや様相が異なる。今の騒ぎの異質さを深掘りすれば、中国人の反日感情の深層が見えてくる。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「なぜ中国だけが怒り狂う? 処理水をめぐる日本叩きに見る中国人「反日感情の深層」とは?【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

 
◇ ◇ ◇

1949年に共産党の統治が始まって以来、中国では反日感情の高まりが周期的に繰り返されるようになった。最近では2012年に日本が尖閣諸島(中国名・釣魚島)を国有化したことをきっかけに反日ムードが高まり、BBCの14年の世論調査で日本が嫌いと答えた中国人は過去最高の90%にも上った。

福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出をきっかけに、今また同じような騒ぎが繰り返されている。

中国人の90%が「日本人が嫌い」と回答(2014年、BBC調査)

中国政府は通常、地理的・歴史的な「根拠」や古文書の記載などに基づく自国の解釈を「動かしようのない事実」と主張し、国民の怒りや憎悪をあおるのがお決まりだ。

それなのに今回は日本政府の海洋放出を「無責任」と断じるばかりで、処理水の安全レベルという肝心要なポイントについては、ひたすら事実を無視するか曖昧にしている。

中国政府のプロパガンダ展開方法

中国の社会政治体制は古代から今に至るまで極端なヒエラルキー型の硬直的なシステムだ。階層の上位者が下位者を経済的に搾取し、肉体的・心理的な虐待を加える。それでも安定を保っているのは、各中間階層で個人は抑圧者であると同時に被抑圧者だからだ。

上位者にいじめられた人間は自分よりも下位の人間をいじめて憂さを晴らす。最下層の人間はサンドバッグ代わりの対象を攻撃する。

中国の極端なヒエラルキー型社会

共産党支配が始まった当初はそれが地主であり、その後は鄧小平ら「走資派」、そして今は「小日本」がたたかれている。もっとも、皮肉なことに、抑圧された人々は憂さ晴らしをする一方で、深層心理ではたたく対象にひそかに憧れてもいるのだが。

最下層中国人にとってのサンドバッグの変遷

ただ、際限なき日本たたきは「ブーメラン」になる恐れもある。反日デモは自然発生的に見えて、実は入念に演出されている。党は草の根レベルの党細胞によって統制された「愛国組織」を通じて暴発を操作し、微調整することができる。(「中国民間対日索賠連合会」「中国民間保釣連合会」などがそれに当たる)

これらの組織は反日活動に熱心になりすぎて暴走すれば解散させられる。日本がもたらす利益や有益な外交関係まで危うくしないために、党指導部はしばしば自制を求め、事態を収拾する必要に迫られるのだ。

反日感情をコントロールする中国政府

共産党が目立たせたい対日問題では、党は人々に騒ぎを起こす動機付けを与えるか、自発的に行動を起こしたかのように錯覚させる嘘をつかなければならない。今回の福島原発の問題がそれだ。党は、岸田文雄首相の台湾主権に関する立場や自由で開かれたインド太平洋を重視する姿勢などが気に入らず、日本を苦しめたいと思っている。

処理水放出に問題がないことは、IAEA(国際原子力機関)がデータを明確に示して結論付けているが、今回は反日感情をたきつけるために公然と事実を無視する道を選んだのだ。

福島原発の問題を政治利用する中国

■詳しくは動画をご覧ください。

インタビュー
現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ」が物議...SNSで賛否続出
  • 3
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 8
    高市首相の「台湾有事」発言、経済への本当の影響度.…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    中国人爆買いが転機、今後は「売り手化」のリスク...…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中