最新記事
DX

マイナンバーカードが次々に失効していく... 岸田政権が「保険証廃止」を強引に進める真の理由とは

2023年8月3日(木)17時35分
磯山友幸(経済ジャーナリスト)* PRESIDENT Onlineからの転載
マイナンバーカードと健康保険証

政府は今の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化させる方針を延期しない方針だが…… umaruchan4678 / shutterstock

<鳴かず飛ばずからの大盤振る舞いで取得率が8割近くに達したのに──>

原因は「ヒューマンエラー」とするデジタル大臣

コンビニで住民票が取れるというのが「便利さ」のウリだったマイナンバーカード。ところが請求したら別人の証明書が誤交付されるケースが出て大きなニュースになった。その後も、「公金受取口座」が他人のマイナンバーに紐付けられていたり、別人にマイナポイントが付与されたケースが相次いで明らかになった。本格運用が始まったマイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」でも本人以外の情報が紐付けられているケースが大量に発覚した。マイナンバーカードを巡る混乱はとどまるところを知らない。

河野太郎デジタル大臣は大半の原因は「ヒューマンエラー」にあるとしている。デジタル庁が作ったシステムの問題ではない、と言わんばかりだ。確かにマイナンバーカードに保険証など別のカードの情報を紐付けようとすると、役所の窓口で役人が関与するケースが増える。ログインしていたマイナポータルの画面からログアウトせずに次の人のデータを入力して別人の情報が紐付けられたケースなどヒューマンエラー、つまり人による誤りが起きているのは間違いない。

マイナ保険証にいたっては「悲惨」そのもの

また、例えば小さな子供の公金受取口座に親の銀行預金口座番号を紐付けるなど、結果的に「他人」を紐付けたものが多数見つかった。その数、6月7日に河野大臣が発表した時点でなんと約13万件。家族ではない他人の口座が誤登録されていたものも748件見つかった。子供でも本人名義の口座を登録しなければいけないという情報が徹底されていなかった「ヒューマンエラー」というわけだ。

マイナ保険証にいたっては「悲惨」そのものだ。6月13日時点で加藤勝信厚労大臣が明らかにした他人の情報が登録されていたケースは7372件。医療機関でマイナ保険証を使った際に「無効」などと表示され、患者が窓口で医療費の10割負担を求められるケースも相次いだ。加藤大臣は6月29日の会見で、カードで加入する保険を確認できなくても、8月診療分からは窓口では本来の3割負担などで支払い可能とする対応策を公表した。マイナ保険証を初めて使う場合には従来の保険証も持っていくように呼びかけるとしており、何ともトホホな対応を迫られている。

経営
「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑むウェルビーイング経営
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ボルソナロ氏長男、26年大統領選出馬を確認 決断「

ビジネス

米NEC委員長「利下げの余地十分」、次期FRB議長

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、5万1000円回復 TO

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止法施行、世界初 首相「誇
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中