最新記事
DX

マイナンバーカードが次々に失効していく... 岸田政権が「保険証廃止」を強引に進める真の理由とは

2023年8月3日(木)17時35分
磯山友幸(経済ジャーナリスト)* PRESIDENT Onlineからの転載

現場努力だけでは「ヒューマンエラー」を防げない

政府はマイナンバーカードの普及に躍起になっており、最大2万円分のポイントの付与などで作成を呼びかけた。その結果、7月2日現在では累計9737万枚と人口の77.3%が取得するまでに広がっている。今年1月末に60.1%だったものがポイントの付与をきっかけに一気に高まったが、これが逆に窓口の業務を爆発的に増やし、ヒューマンエラーを助長した面もある。

それでもIT(情報技術)の専門家からすれば、数百件のシステムエラーがあったとしても、1億枚近くある母数を考えれば、わずかな比率だということになるのだろう。7月2日のNHKの日曜討論には河野大臣が出演、「マイナカード問題 どう対応?」というタイトルで放送されたが、討論というよりも問題沈静化を図るための国民への説明という感じだった。

出演者が個人認証制に肯定的な専門家だったということもある。さすがに、「役所もミスをするという認識を国民が持つ必要がある」というシンクタンク研究員の発言には、現場でシステム作りを担っている埼玉県戸田市役所の大山水帆デジタル戦略室長が「役所では絶対間違いが起きないような仕組みにしなければいけない」と嗜めていた。もっとも、各自治体でデジタル化に取り組める人材が圧倒的に足りない実態なども強調。現場の努力だけではヒューマンエラーの再発が防げない危機感を示していた。

デジタル化しても「仕事の仕組み」が変わっていない

なぜ、こんなにデータの紐付けでトラブルが起きるのか。それは単なる「ヒューマンエラー」なのかというとそうではない。DXというのはデジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル化と共に、それまでの仕事の仕組みを変えていくことを示している。デジタル化すれば仕事が変わる、というのではなく、仕事のやり方や流れをデジタル化できるように変えていくということが重要になる。この「X」(トランスフォーメーション)ができていないことが日本のDX化が進まない最大の原因なのだ。

例えば、マイナンバーカードに別人の公金受取口座が紐付けられてしまった最大の理由は、銀行口座の「氏名」が「カタカナ」になっていることだ。一方、マイナンバーに登録されている氏名は「漢字」のみ。カタカナの読みが入っていないので、システムで自動的に名寄せをすることができない。データの大本になる戸籍にはそもそも読み仮名がないのだ。住民基本台帳にはカタカナの読みを入れている市町村もあるが、検索する便宜上のもので、その読みが本当に正しいかどうかを示したものではない。つまり、銀行口座のカタカナ氏名と住民基本台帳の読みが一致するとも限らないのだ。

メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏 、 ホルムズ海峡に多くの国が軍艦派遣と

ビジネス

イラン情勢注視続く、FRB金利見通しも焦点=今週の

ワールド

イスラエル、レバノンと数日内に協議へ ヒズボラと戦

ワールド

北朝鮮の金総書記、多連装ロケット砲の発射訓練視察=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 4
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 5
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 6
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 7
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中