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ロシアとの戦争に備えて戦時体制に入ったNATO

NATO Has Switched to War Footing With Russia

2023年6月19日(月)13時24分
ブレンダン・コール

ウクライナ侵攻でロシアの脅威に目覚め、NATOに加盟したフィンランド(4月4日、ヘルシンキ) Markku Ulander/Lehtikuva/REUTERS

<抑止が失敗した今、ロシアとの直接的な衝突は「いつなんどき起きるかわからない」とNATO高官の一人は警告。準備を急ぐよう促した>

「国民に怯えすぎ!」 演説するプーチン大統領、聴衆との間の「異常な距離」が話題に

ウラジーミル・プーチンがウクライナに全面侵攻したおかげで、NATO諸国は、冷戦終結以降は想像もつかなかった計画に着手し始めている----ロシアとの軍事衝突だ。

だが、7月11日からリトアニアのビリニュスで開かれるNATO首脳会議を前に、かつてヨーロッパ連合軍最高指揮副官を務めたリチャード・シレフは、NATOはとてもロシアと戦争できる態勢ではないと語った。

「本気で尻を叩く必要がある」とシレフはニューズウィークに語った。ロシアが侵略してきたときは自力でも跳ね返す覚悟で軍備増強をしているポーランドのような例外はあるものの、他の同盟国は縮小傾向にある軍事予算にを見直すべきだと言う。

最大の脅威は中国ではなかった

「東欧で大規模な戦争が進行している。これは地上戦であり、空中戦でもある。したがって、空と陸に投資する必要があるが、まだ実行されていない」とシレフは述べる。「(NATO事務総長の)イェンス・ストルテンベルグは、2022年にマドリードで開いた首脳会議で、NATOは即応部隊を30万人に増強すると発表したが、それもまだできていない」

イギリスの退役将軍でもあるシレフによれば、NATO全体で見られるそうした予算削減の一例がイギリス軍であり、予算が切りつめられ「ばかげた規模」にまで小さくなっているという。その背景には、防衛幹部が、長期的な最大の脅威はロシアではなく中国だと信じていたことがあるとシレフは考えている。

「重要なのは地理であり、われわれに最も近いオオカミはロシアだ」とシレフは述べた。これまでのNATOによる「抑止は失敗」であり、そのせいで2014年にプーチンが一方的にクリミアを併合した後も、戦力を増強する機会を逸したという。

「NATOが、ロシアとの通常戦争に堪える戦力を捻出できるとは思えない」

ロシア政府と国営メディアは、この戦争は、すでにロシアとNATOの代理戦争であると主張しているものの、NATOは戦闘において直接的な役割を避けようと苦心し、そのかわり、ロシアの侵略に対抗するための装備をウクライナに提供してきた。

だが、ロイターの報道によれば、NATO高官のひとりであるロブ・バウアー大将は5月、NATOは、ロシアとの直接的な衝突は「いつなんどき起きるかわからない」という事実に備えなければならないと話したという。

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