最新記事
米ロ関係

ロシアはアラスカをミサイル攻撃せよ──やられっぱなしにはもう飽きたとロシア議員

Russian Lawmaker Threatens Alaska With Missile Strikes

2023年5月29日(月)15時12分
ニューズウィーク日本版デジタル編集部

アラスカのエルメンドルフ=リチャードソン統合基地で演習中のF-22戦闘機(2019年) U.S. Air Force/Justin Connaher/REUTERS

ロシアの下院議員が、アメリカのアラスカ州にミサイル攻撃をすべきだと主張した。

アンドレイ・グルリョフ議員は数日前、ロシア国営テレビの番組に出演してこう語った。「アメリカの領土はロシアの戦略核兵器の射程内だ。それに(ベーリング)海峡のすぐ向こうにアラスカがあるではないか」。ちなみにこのやりとりに字幕を付けてSNSで拡散したのはウクライナ内務省顧問のアントン・ゲラシチェンコだ。

「ロシアにはイスカンデル戦術ミサイルも、弾道ミサイルも巡航ミサイルもある。アラスカを完膚なきまで叩きつぶす力がある」とグルリョフは述べた。「たいした兵力は必要ない。旅団が2つくらいあれば十分だろう」

コメンテーターがなぜアラスカを攻撃するのかと聞くと、スカベーエワは「アメリカ人を恐怖に陥れるため」だと答えた。

グルリョフはこの数日前には、プーチン寄りの人気司会者ウラジーミル・ソロビヨフのインタビューに答えて、ウクライナに核攻撃をすればいいと言っていた。

「戦術核兵器でウクライナ軍の司令部や空港などの重要施設を破壊すればウクライナは麻痺状態になる。そうなれば、これまでとはまったく異なる対話が始められる」

 グリュロフは、アメリカが対戦車ミサイルのジャベリンや高機動ロケット砲システムのハイマースといった強力な兵器をウクライナに供与するたび、慌てて対応を迫られてきたこれまでの戦争の経緯に飽き飽きとしたと言い、ロシア側から敵を慌てふためさせる方法について語っているのだ。

ロシアは昨年2月にウクライナへの侵攻を開始。ウクライナ各地では1年以上にわたって激しい戦闘が続いている。

「核の黙示録シナリオ」の可能性が高まる?

侵攻開始以降、アメリカはロシアとロシアのウラジーミル・プーチン大統領を繰り返し非難してきた。そしてウクライナに対し、ミサイルや戦車、ドローンや防空システムなどの軍事支援を行ってきた。

プーチンとロシアも、このアメリカのウクライナ支援を非難。ロシアの安全保障会議副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ前大統領は、もしウクライナへの兵器供与が続くなら、世界はさらに「危険の」度を増すと警告した。

「こうした(供与される)武器の破壊力が上がれば上がるほど、いわゆる『核の黙示録』のシナリオの可能性が高まる」と、メドベージェフは述べたと、ロシア国営タス通信は伝えている。

ウクライナ侵攻が始まって以降、ロシアのコメンテーターたちは何度もアラスカ攻撃を話題にしてきた。ちなみにアラスカは1867年にアメリカに720万ドルで売却される前はロシア領だった。

「(ナポレオン戦争後にヨーロッパの領土確定を目指して行われた)ウィーン会議(1814〜1815)は、ワルシャワをロシア帝国の一部だと認めた。フィンランドもロシア帝国の一部だと認められた。この時の国境線まで戻すことに賛成だ」と、ロシア中東研究所のエフゲニー・サタノフスキー所長は2月、国営テレビで述べた。「そうすれば、アラスカは再びロシアのものになる」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中