(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)
100%死に至る... 狂犬病とともに「致死率最悪」でギネス認定された病気とは
クロイツフェルト・ヤコブ病の患者の脳 BSIP-UIG/GETTY IMAGES
<2000年代初頭、イギリスを中心に広まって社会問題に>
「(非遺伝性疾患で)最も致死率が高い」としてギネス認定されている病気は? プリオン病と狂犬病だ。
プリオン病は伝達性海綿状脳症(TSE)とも呼ばれる非常にまれな中枢神経疾患。異常プリオンタンパクが原因で、数年から数十年の長い潜伏期間を経て症状が現れると急速に進行し、不随意運動、認知症、運動失調、人格変化などが起こり、100%死に至る。
ヒトのプリオン病である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は、牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛を食べることでかかると考えられており、2000年代初頭にイギリスを中心に広まり社会問題になった。
狂犬病は致命的な感染症の中で最も一般的だ。WHO(世界保健機関)の推計では、世界で年間5万人以上が死亡している。予防接種や感染後のワクチン投与で効果的に発症を防げるが、症状を示した後の致死率は99.99%以上だ。
世界でも生還例はごくわずか。04年10月に発症した米ウィスコンシン州の15歳の少女がワクチン接種なしで回復したのが最初の例だ。
治療法は「ミルウォーキー・プロトコル」と呼ばれ、その後も数人の生存者を出している。患者を昏睡状態に誘導し抗ウイルス薬などを投与するが、まだ研究途上で、成功率は1割程度。麻痺などの後遺症が残るのが現状だ。
[筆者]
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専攻卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)、獣医師。朝日新聞記者、国際馬術連盟登録獣医師などを経て、現在、立命館大学教員。サイエンス・ライティング講座などを受け持つ。文部科学省COI構造化チーム若手・共創支援グループリーダー。第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。デビュー作『馬疫』(光文社)を2021年2月に上梓。