最新記事

感染症

アメリカで「狂犬病」感染が過去10年で最多に、最大の問題は「認識の欠如」

US Seeing Uptick In Human Rabies Cases Linked To Bats

2022年1月8日(土)16時12分
アテナ・チャン
狂犬病ウイルス

CDC/Dr. Makonnen Fekadu

<19年、20年と0人だったアメリカにおける狂犬病の症例が、21年には5人に急増。CDCはリスクを認識し直すことの重要性を訴える>

昨年、アメリカでコウモリを介した狂犬病の感染例が次々と報告された。9月28日~11月10日の6週間には、3人が死亡したと米疾病対策センター(CDC)が報告している。3人はアイダホ州、イリノイ州、テキサス州の子供1人と大人2人。すべて男性だった。

彼らは全員が発症の3~7週間前となる8月にコウモリと直接接触していたことが分かっており、発症から2~3週間以内に死亡した。CDCの報告書によれば、2件は「回避可能な(ウイルスへの)暴露」であり、うち1件については素手でコウモリを拾い上げていたという。

また3人とも、ウイルスに感染した可能性がある後に接種することで狂犬病の発症を防ぐことができる「暴露後予防(PEP)」を受けていなかった。CDCによれば、3人のうち2人は暴露による狂犬病のリスクを適切に認識していなかったようだが、1人については「長年にわたるワクチンへの不安」を理由に、コウモリが狂犬病ウイルスの検査で陽性と示された後にもPEPの接種を拒否していた。

昨年はじめには、すでに2人が狂犬病で死亡していたため、これらの症例によってアメリカにおける年間の狂犬病の症例数は5人となった。19年、20年には狂犬病の症例は報告されておらず、5人という数は過去10年で最大になるという。

コウモリとの接触には現実的なリスクが

CDCの狂犬病専門家で獣医のライアン・ウォレスは声明で、「アメリカは毎年、狂犬病に感染する人の数を減らすべく長い道のりを歩んできた。だが最近の一連の症例は、コウモリとの接触には現実的な健康リスクがあるという厳しい現実を思い起こさせる」と記している。

アメリカにおけるヒトへの狂犬病感染は「まれ」と見なされている。CDCによれば、通常は年間に1~3例の症例があり、09~18年の間には25件の症例が報告された。そのうちの7件はアメリカ国外で感染したものだったという。

CDCは報告書で次のように述べている。「狂犬病の報告数は07年以降、安定してきた。最近の急増が示しているのは、狂犬病のリスクについての人々の認識が欠如しているということだ」

コウモリは生態系において非常に重要な種であるが、一方でアメリカでは狂犬病をもたらす主な原因であり、感染例の70%を占めている。コウモリと人間の両方の健康を守るために、コウモリとの接触を避けることが重要となる。

コウモリが咬んだり引っかいたりした傷は非常に小さいため、本人が気付かないまま狂犬病に感染してしまうこともある。そのためウイルスに暴露したかどうかが確かでなくとも、PEPを受けることが重要となる。

発症前にPEPを受ければ、「ほぼ100%」の予防効果があるとされるが、一方でひとたび発症してしまうと、命が助かる可能性は「ほぼ0%」だ。目覚めたとき、もし部屋に見知らぬコウモリがいれば、まずは医師に連絡してPEPが必要かを相談すべきだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBの政策は「良好」、イラン戦争には警戒=シュナ

ワールド

焦点:中東産原油に依存するアジア、代替の選択肢は限

ワールド

原油価格「より一層上昇傾向」、経済への影響はコメン

ワールド

サウジ財務省、財政は強固と強調 「紅海など輸出ルー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 2
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 3
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリアルな街で考える60代後半の生き方
  • 4
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 7
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中