アングル:植田日銀総裁、利上げ姿勢崩さず 4月会合へ中東情勢見極め
日銀の植田和男総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で、中東情勢が緊迫化する中でも追加利上げを模索していく姿勢を崩さなかった。写真は日銀の植田和男総裁。2025年12月、都内で撮影。REUTERS/Manami Yamada
Takahiko Wada
[東京 19日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で、中東情勢が緊迫化する中でも追加利上げを模索していく姿勢を崩さなかった。中東情勢で成長率が下がることがあっても、一時的なもので基調物価の経路に影響しないなら利上げは可能だと明言。国内景気の底堅さに加え、賃金・物価が相互に参照しながら上昇していくメカニズムへの期待もうかがわせた。
経済・物価の先行きは中東情勢の混乱がどの程度続き、原油市況がどの水準で落ち着くかに大きく依存するが、情勢次第で4月会合で利上げする余地も残したかたちだ。総裁発言を受け、市場は4月利上げの可能性を意識。為替市場ではドルがやや下振れるなど、円高方向の動きとなった。
<基調物価、上方リスクが優勢>
利上げ判断に当たって重要になる基調的な物価上昇率について植田総裁は、今回の供給ショックにより、基調は上下に振れる可能性があると述べた一方で、2022年のロシアによるウクライナ侵攻当初に比べて企業の賃金・価格設定行動が「強まっている可能性があることにも留意が必要」と話した。
また、今回の決定会合で基調物価の先行きについて議論したことを明らかにし、上方リスクを重視する委員と下方リスクを重視する委員とで「微妙に前者の方が多かった」とも述べた。
会見では、足元までの日本経済や企業収益、賃上げ動向が日銀の見通しに沿って推移していることにも言及した。中東情勢の緊迫化する前のデータは「これまでの見通しを正当化するような、オントラックと評価していいような情報やデータが多かった」と述べ、「人によってはやや強めくらいとの見方だった」と明らかにした。
<基調物価の方向、短期間で分かる可能性>
日銀は基調物価をさまざまなデータで見極めている。例えば企業の予想物価上昇率は日銀短観、家計の予想物価上昇率は「生活意識アンケート調査」など、四半期に1回の統計や調査がもとになっているが、植田総裁は基調物価は「過去からの様々なデータの積分のようなもの」と表現。新たなショックが起きた場合、厳密な判断は難しくても「どの方向に行きそうか、変動がどの程度なのか、短期間でわかる可能性はある」と話した。
SBI新生銀行の森翔太郎シニアエコノミストは、ロシアによるウクライナ侵攻時と比較して、企業の価格設定行動が積極化している旨の指摘や、政策委員の中で原油価格上昇による上方リスクを重視する人数が多いといった言及を踏まえると「日銀は基調的な物価上昇率の上振れリスクをより警戒していると思われる」と指摘。「影響が原油価格の上昇を中心としたものにとどまるのであれば、基調的な物価上昇率の上振れリスクを意識したリスクマネジメント・アプローチに基づき、4月に利上げに踏み切る可能性が高い」とみている。
<円安進行なら利上げの見方も>
ただ、中東情勢はまだ落ち着く気配を見せていない。植田総裁も金融政策は毎回の決定会合ごとに適切に判断すると述べるにとどめており、情勢の見極めには時間を要する可能性もある。総裁は中東問題が起きる前のシナリオに対し、上振れか下振れかということで政策判断していくと話したが、原油高、円安が止まらない場合、景気下押しリスクとの兼ね合いでその判断は難しくなる。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、輸入物価の高騰につながる円安を抑えることが必要だと話す。「円安が進むことで、国内のガソリン価格や食品価格がまた上がる悪い循環になってしまう」と警戒感を示し、円安が進めば日銀は4月利上げに追い込まれるとみている。





