最新記事
人道支援

アメリカに避難した27万人のウクライナ難民に迫る、タイムリミット

AN IMMIGRATION LIMBO

2023年4月20日(木)14時25分
キャサリン・ファン

これまでマリアと娘のように臨時許可で入国した人たちの苦境に光が当たることはあまりなかった。アメリカに逃れてきたウクライナ人の大半は、強制退去の危機が差し迫っていないためだ。

現在、ほとんどのウクライナ避難民はU4Uの下でアメリカに滞在している。このDHSのプログラムは、移民専門弁護士や支援団体の評価も高い。

米国内に支援者がいることなどを条件に2年間の滞在を認める同プログラムは、門戸の狭い国務省の難民認定プログラムに代わる仕組みになっているのだ。この制度によりアメリカが受け入れたウクライナ人は10万人を超す。

夫婦で滞在期限が違う場合も

一方、U4U以前に臨時許可で入国した人たちは、もっと先行き不透明な状況に置かれている。DHS内の機構の仕組みがその大きな原因だ。

メキシコから国境を越えてアメリカに入国した人たちに対応するのは、DHS内の税関・国境取締局だ。この機関は、長期滞在を望む人たちへの対応よりも、入国管理を専門としている。長期滞在者への対応を専門とするのは、DHS内でも市民権・移民局だ。

3月にDHSが全員を対象に滞在期間延長の審査を行う方針を示すまで、臨時許可で入国した人たちが滞在期間の延長を申請するためには、入国手続きを行った場所まで赴いて申請する必要があった。

アタマスの場合で言えば、米北東部のマサチューセッツ州エバレットから、南西部のカリフォルニア州南部まで足を運ぶ羽目になるところだった。

マサチューセッツ州スプリングフィールドからカリフォルニア州サンディエゴまで出向かなくてはならないはずだったのは、オレクシーとナタリアのワシチェンコ夫妻だ。

ロシアとの国境から100キロほどの村で暮らしていたワシチェンコ一家は、開戦直後の日々、家の上空をロケットが飛んでいくのを見て過ごした。「最初の数週間は極度の恐怖の下で生きていた」と、夫のオレクシーは振り返る。

ロシア軍が村に乗り込んでくるという情報を隣人から聞くと、ナタリアは息子と一緒に村を脱出した。ぎゅう詰めの列車に乗ってポーランドを目指し、そこからドイツ、フランスを経て、メキシコに渡った。

メキシコシティに着くと、南東部の町カンクンに連れて行かれて、バスでアメリカとの国境まで運ばれた。そこで待っていた税関・国境取締局の職員が人道的臨時入国許可の手続きをした。しかし、ナタリアと息子の滞在期限は4月19日で切れる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン戦争は2週目に、トランプ氏「無条件降伏」求め

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格

ワールド

焦点:道半ばの中国「社会保険改革」、企業にも個人に

ワールド

昨年の関税合意実施を米と確認、日本が不利にならない
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 2
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 3
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 7
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園…
  • 8
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中