最新記事
人道支援

アメリカに避難した27万人のウクライナ難民に迫る、タイムリミット

AN IMMIGRATION LIMBO

2023年4月20日(木)14時25分
キャサリン・ファン

230425p46_BUN_02.jpg

滞在期限は延長されると、ロフグレン議員はみる CHIP SOMODEVILLA/GETTY IMAGES

「なんらかの措置が打ち出されない限り、アメリカを出ていくほかなくなる。でも、ウクライナには戻れない。私たちの村はロシアとの国境に近すぎる」と、ナタリアは語る。「滞在できる期間が延びれば、その間にウクライナが安全になって帰国できるかもしれない」

マリアの夫とナタリアの夫は、いずれも妻より遅れて昨年夏にアメリカに入国することができた。2人ともU4Uの対象になったのだ。

しかし臨時許可の期限が延長されなければ、家族はいずれ難しい決断に直面するかもしれない。家族全員でアメリカを離れるのか。それとも滞在資格を持つ者は残るのか。

DHSはウクライナ人が複雑な経路で入国したことを認識し、必要な場合は権限を共有し管轄を移すことに同意している。問題は管轄の移動だ。これまで税関・国境取締局としか接してこなかった数万の難民を、どうやって市民権・移民局のシステムに移すのか。

「DHSが問題に気付いていなかったわけではない」と、支援団体ウクライナ移民タスクフォースのエグゼクティブ・ディレクター、アン・スミスは言う。「数の多さを実感していなかったのだ」

支援に当たる弁護士は政府機関の職員が既存の枠組みの中でしか動けないことを承知しつつ、タイムリミットが迫っていると訴える。

メラニー・ザメンホフは、コネティカット州にある非営利団体グリニッチ・ユダヤ人家族サービスの法務ディレクター。3月に入っても「政府が何の手も打っていないことに、ただただ愕然とした。臨時許可の滞在期限は翌月には切れるのに」と、彼女は振り返る。

数日後DHSは臨時許可の入国者もU4Uと同等に扱うと発表したが、ザメンホフは既に動きだしていた。当事者を税関・国境取締局に連れて行き、それで駄目なら市民権・移民局で滞在延長を願い出た。延長が却下されれば亡命を申請するつもりだが、戦争は亡命の理由にならないのでこれは難しいかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

駐日中国大使、台湾巡る高市氏発言に強く抗議 中国紙

ビジネス

米国とスイスが通商合意、関税率15%に引き下げ 詳

ワールド

米軍麻薬作戦、容疑者殺害に支持29%・反対51% 

ワールド

ロシアが無人機とミサイルでキーウ攻撃、8人死亡 エ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗り越えられる
  • 4
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 7
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中