最新記事
米中対立

中国軍の台湾「封鎖」演習を監視していた米海軍第11空母打撃群

U.S. Navy strike group keeps close eye on China's carrier near Taiwan

2023年4月11日(火)19時25分
ジョン・フェン

台湾の邱国正国防部長は先週、ニミッツに関する質問に対して次のように述べていた。「山東を監視するために派遣されたとは言えないが、配置を考えると関連はあるだろう」

ニミッツの配備について、本誌はハワイを拠点とする米インド太平洋軍司令部にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

ペロシの訪台を受けて中国が軍事演習を実施して以降、アメリカは台湾から米軍の兵器類を引き揚げ、中国が事態をさらにエスカレートさせる口実を与えないようにしてきた。ジョー・バイデン米政権のインド太平洋調整官であるカート・キャンベルは2022年8月、「我々は条件反射的な行動は取らず、忍耐強く効果的な行動を取っていく」と述べていた。

それにもかかわわらずニミッツをこの海域に留め置いたアメリカの決定には、「台湾やアメリカが何をしようと、中国は領土拡張に向けて突き進む」という米政府の考えが反映されていると、台湾国防部傘下のシンクタンク「国防安全研究院」の蘇紫雲は指摘した。

「ニミッツの存在は特別だ」と彼は本誌に述べた。「台湾海峡を艦載機の射程内に収めつつ、その能力を誇示している」

米下院議員団が訪台

蘇はまた、ペロシの訪台後に行った軍事演習の時とは違う「政治的な背景」があった、とも指摘した。習近平は最高指導者(国家主席)として正式に3期目に入っており、外交的な反発や自国経済への打撃を回避するために今回の対抗措置は以前より控えめなものにとどめることができたという。

中国外務省の汪文斌報道官は10日、今回の軍事演習は「『台湾独立』の分離主義勢力、および彼らと共謀する外部勢力による挑発に対する重大な警告」だと主張。台湾独立は、中台間の平和と安定とは「相容れない考え方」だと述べた。

台湾外交部は中国に対して、「道理をわきまえ自制する」よう促し、さらに中国は「台湾市民を力ずくで支配し、台湾海峡の現状を変えようとするのをやめるべきだ」とつけ加えた。

同外交部はまた、声明の中で「国際社会の責任ある一員として、台湾は争いをエスカレートさせたり、対立を煽ったりするつもりはない」と述べた。「台湾は主権と本土の安全保障を断固として守り、民主主義と自由の防衛線を維持していく」

中国政府が今回の威嚇行動に出た背景には、米下院外交委員会の代表団が台湾を訪問していたこともあった。同委員会の委員長を務めるテキサス州選出のマイケル・マコール下院議員は7日にFOXニュースに対して、米国民が支持すれば、台湾を(中国による侵攻から)守るために米軍を派遣することも「検討中」だと述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

イスラエルがシリア攻撃、少数派保護理由に 首都近郊

ワールド

学生が米テキサス大学と州知事を提訴、ガザ抗議デモ巡

ワールド

豪住宅価格、4月は過去最高 関税リスクで販売は減少
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中