最新記事
心理

「先延ばし傾向」 と抑うつ、不安、睡眠の質の悪さ、孤独......とは関係がある、との研究結果

2023年3月20日(月)16時27分
松岡由希子

「先延ばし」 と抑うつ、不安、睡眠の質の悪さ、孤独......と関係がありそう...... Creative Lab-shutterstock

<「先延ばしする人は心身の健康を損なうリスクが高いのか」、スウェーデンの学生3525人を対象に研究調査が実施された......>

やるべきことを後回しにする「先延ばし」と心身の不健康との間に関連性があることがわかった。スウェーデン・スフィアヘメット大学、カロリンスカ研究所らの研究チームは、2023年1月3日付の医学誌「JAMAネットワーク・オープン」でその研究成果を発表している。

研究チームは、「先延ばしする人は心身の健康を損なうリスクが高いのか」を調査するべく、2019年8月19日から2021年12月15日まで、首都ストックホルムと中部エレブルーの8つの大学に在籍する学生3525人を対象に縦断研究を実施した。被験者の63%は女性で、平均年齢は24.8歳であった。

抑うつ、不安、睡眠の質の悪さ、孤独......と関係が

被験者は1年にわたって3カ月ごとにアンケートに回答。被験者全体の73%にあたる2587人が9か月後の追跡調査に参加し、総体的な健康状態、メンタルヘルス、生活習慣などを含む健康転帰が評価された。

その結果、先延ばし傾向の強さは、抑うつ、不安、ストレス、肩や腕の痛み、睡眠の質の悪さ、運動不足、孤独、経済的困難と関係があった。

先延ばし傾向と特に関連性が強い項目は見つからなかったが、先延ばしが幅広い健康転帰にとって重きをなしている可能性は否定できない。研究論文では、今回の研究結果について「学生に先延ばしが多いことを鑑みると、学生の健康への理解を深めるうえで意義があるだろう」と評価している。

なお、今回の研究結果は因果関係を裏付けるものではない。また、現時点で考慮されていない他の要因が、先延ばしとその後の健康転帰との関係を説明づける可能性も残されている。

先延ばし傾向は改善できる

先延ばし傾向は改善できる。2016年9月に発表された研究論文では、先延ばしの改善に認知行動療法が効果的であることが示された。これは、長期的な目標を短期に分割したり、注意散漫をマネジメントしたり、ネガティブな感情を持ちながらタスクに集中するなどして、先延ばしを克服するというものだ。

研究チームは、タスクに集中しなければならないときスマートフォンを別の部屋に置いておくなど、小さなことから取り組むように説いている。


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有

ビジネス

FOMCが焦点、0.25%利下げ見込みも反対票に注

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使らと電話会談 「誠実に協力し

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中