最新記事

天体観測

5万年に1度のチャンス、肉眼で見える緑の彗星が接近中

Green Comet Tracker: C/2022 E3 (ZTF) Location and Viewing Tips

2023年1月19日(木)15時12分
アリストス・ジョージャウ

(画像はイメージです) Nazarii Neshcherenskyi-iStock.

「緑色の彗星」がいま、太陽系に猛然と近づきつつある。彗星が通過する様子は、手軽な装置で誰もが追跡できるかもしれない。

ZTF彗星(C/2022 E3)と呼ばれるこの彗星は、まもなく地球に最接近し、2月1日には、地球からおよそ約4200万キロまで近づく。その頃には、かろうじてだが肉眼でも見えるようになるかもしれない。

彗星は、凍ったガスや塵、岩石からなる天体で、太陽のまわりを回っている。ときに「宇宙の雪玉」とも呼ばれるこうした天体は、太陽に近づくにつれて放射線の猛攻を浴びるようになり、ガスや破片を放出する。

このプロセスにより、彗星のまわりには、「コマ(coma)」と呼ばれる光を放つ大気と、ガスと塵からなる2本の長い尾ができる。ZTF彗星の場合は、このコマが緑色に見える。

地球を通り過ぎたあとは、ZTF彗星は内太陽系を離れ、おそらく二度と戻ってこないだろう。

この彗星の動きを観測したい人のために、「スカイライブ(TheSkyLive)」は太陽系の3D図を提供し、リアルタイムで更新している。

この図では、太陽と各惑星に対するZTF彗星(C/2022 E3)の軌道が表示される。このツールを使うと、この彗星が今まさに地球と火星の軌道のあいだを通過しようとしていることがわかる。時間と日付を変更すれば、過去や未来の任意の時点における彗星の位置が表示される。

ZTF彗星軌道の見かけ上の形は「開曲線」のように見える。これは、この彗星が内太陽系に二度と戻らず、そのまま深宇宙への旅を続ける可能性があることを示している。戻ってくるとしても、少なくとも5万年は戻ってこない、と英国グリニッジ王立天文台の天文学者ジェシカ・リーは本誌に語った。

スカイライブは3D図のほかにも、ZTF彗星関連の特設ページで、この彗星の現状に関する豊富な補足情報も提供している。

このウェブサイトではたとえば、この彗星が空のどこに見えるかや、今後数日で彗星の位置がどう変わるかがわかる。現時点ではこの彗星は、うしかい座のなかに見える。

少し前には、かんむり座のなかに見えていた。うしかい座のあとは、1月22日までに、りゅう座のなかに移動する。

スカイライブではそのほか、任意の地点からZTF彗星を観測したい場合に目を向けるべき場所や、空に出る時間と沈む時間もわかる(たとえばニューヨークで見るなら、現在はそれぞれ午後10時30分と午後5時30分ごろ)。

ZTF彗星の等級からすると、小型の双眼鏡や望遠鏡の助けがあれば観測できるだろう。天文学者の予測によれば、この彗星は今後数日で明るくなるので、理想的な条件下なら、肉眼でもうっすら見える可能性があるという。とはいえ、彗星の明るさの予測は難しいことで悪名高いため、肉眼で見える明るさには達しないかもしれない。

スカイライブでは、ZTF彗星が地球からどれくらい離れているかも示されている。現時点では、この彗星は地球からおよそ5500万マイル(約8900万キロメートル)のところにある。
(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ウェイモ、リフトと提携し米ナッシュビルで来年から自

ワールド

トランプ氏「人生で最高の栄誉の一つ」、異例の2度目

ワールド

ブラジル中銀が金利据え置き、2会合連続 長期据え置

ビジネス

FRB議長、「第3の使命」長期金利安定化は間接的に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中