最新記事

戦争

「ウクライナ軍の活路は冬にしかない」──米戦争研究所

Why the U.S. Is Wrong About Ukraine's Chances This Winter

2022年12月6日(火)17時48分
ジュリア・カルボナーロ

雪に覆われたウクライナの首都キーウ Gleb Garanich-REUTERS

<冬の間はウクライナ、ロシア両軍とも態勢を整え直し、春の本格的な戦闘に備えることになる、という米情報当局の分析は誤りで、もしウクライナ軍が冬の好機を逃せばロシア軍が息を吹き返してしまうと指摘>

ウクライナがさらなる領土奪還に向けてロシア軍に反撃するいちばんのタイミングは春だ、という米政府関係者の分析は誤っていると、米ワシントンを拠点とするシンクタンク戦争研究所(ISW)は指摘する。

アメリカの情報機関を統括する国家情報長官(DNI)を務めるアブリル・ヘインズは12月3日、カリフォルニア州シミバレーで開催されたレーガン国防フォーラムで、ウクライナでの戦争は冬になって戦闘の「テンポが落ちた」とし、両軍が来春の反抗に向けて準備に入ったと述べた。現に東部ドネツク州では戦闘が下火になっていると、ヘインズは述べた。

「問題は、冬が終わったときにどんな反攻が繰り広げられるのか、だ」と、ヘインズは言った。「率直に言って、両軍とも、反攻のためには再装備や補給など再編成が必要な状態だろうと我々は考えている」

だがISWはその見方に反論する。12月4日に公表した報告書のなかで、ヘインズの情勢判断はいくつかの兆候を見落としていると指摘した。「冬のあいだは、(凍って硬い)地面が攻勢をかけるうえで有利に働くこと、そして、ウクライナ軍には作戦完了後に比較的すばやく次の攻撃に移る傾向があること」だ。

畳み掛けるのがカギ

ウクライナ軍は11月半ば、2月の侵攻開始直後からロシア軍に占拠されていた南部の都市ヘルソン(ヘルソン州の州都)を奪還した。同地域では、ほぼ同時に40を超える町をロシアから奪い返している。ロシア政府は、ヘルソン州に駐留していたおよそ3万人の軍隊に撤退を命じた。

ISWはこう述べている。「ウクライナ軍は、2022年8月に主導権を握って以来これを保持しており、次々と作戦を展開して成果をあげている。9月にはハルキウ州のほぼ全域を、11月にはヘルソンを、ロシア軍から奪還した。ウクライナ軍は現在、この冬にほかの場所でさらなる攻勢をかけるべく態勢を整えているところだ」

ISWは、ウクライナ戦争における冬という季節の重要性を過小評価しているわけではない。ISWは今冬について、以下のように述べている。「冬は、ウクライナ軍が機動戦を展開するさい、いかに休止期間を最小限に抑えて次々と成果を上げ続けられるかを決定づけるだろう。休止期間が長いと、ウクライナが主導権を失うリスクが高まる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル大統領選、ボルソナロ氏が長男出馬を支持 病

ワールド

ウクライナ大統領、和平巡り米特使らと協議 「新たな

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中