最新記事

死因

「意外な物質の過剰摂取...?」ブルース・リーの死因をめぐる新たな仮説が示された

2022年11月24日(木)17時40分
松岡由希子

ブルース・リーの死因は、公式には、鎮痛剤「エクアジック」への過敏性反応による脳浮腫が死因だとされているが......REUTERS/Bobby Yip

<ブルース・リーは1973年7月20日、32歳の若さで死去した。公式には、鎮痛剤「エクアジック」への過敏性反応による脳浮腫が死因だとされているが、新説が示された......>

武道家からアクションスターへ転身し、「ドラゴンへの道」や「ドラゴン怒りの鉄拳」などの香港映画で主演を務めたブルース・リーは1973年7月20日、32歳の若さで死去した。死亡時の脳重量は平均値1400グラムを上回る1575グラムで、剖検では脳浮腫が認められた。公式には、鎮痛剤「エクアジック」への過敏性反応による脳浮腫が死因だとされている。

>>■■【動画】ブルース・リーのドキュメンタリー『Be Water(水になれ)』の予告動画

 
 
 
 

「腎臓が過剰な水分を排泄できなくなったことが死を招いた」

スペイン・マドリード自治大学(UAM)ヒメネスディアス財団病院の研究チームはこれまでに公表されている情報を分析し、「ブルース・リーの死因は低ナトリウム血症による脳浮腫である」との新たな説を示した。その研究論文は医学雑誌「クリニカル・キドニー・ジャーナル」(2022年12月号)で掲載されている。

研究チームは、ブルース・リーが「エクアジック」を以前にも服用しており、死亡当日、頭痛など、脳浮腫で説明がつく症状が出た後に「エクアジック」を服用していることから、「『エクアジック』への過敏性反応による脳浮腫」とする公式の死因を否定。「『エクアジック』への過敏性反応が死因だとしたら、剖検で見つかるのは脳浮腫だけではないはずだ」とも主張している。

研究チームの新たな仮説は「腎臓が過剰な水分を排泄できなくなったことが死を招いた」というものだ。

低ナトリウム血症とは血液中のナトリウム濃度が非常に低い状態をさす。研究チームの分析によると、ブルース・リーには、慢性的な水分の過剰摂取、喉の渇きを高めるマリファナの使用、アルコール摂取、処方薬の服用、急性腎不全(AKI)の既往歴など、低ナトリウム血症の危険因子が複数あったとみられる。

最期の数カ月間、固形物を食べていなかった

たとえば、ブルース・リーは最期の数カ月間、固形物を食べずに、もっぱらニンジンジュースやリンゴジュースを飲むという食生活を送っていた。死亡当日も体調に異変が起きる直前まで、一日中繰り返し水分を摂取していたという。一般論として、過剰な水分摂取が尿中への水分排泄と一致しない場合、低ナトリウム血症となり、脳浮腫を引き起こし、数時間で死に至るおそれがある。

研究チームは当時の状況をふまえ、「ブルース・リーは水分の恒常性を維持するために過剰な水分を十分排泄できない『腎不全』で死亡したと仮定する」と結論し、「健康で若い人でも、水分の過剰摂取によって低ナトリウム血症となり、死亡するおそれがあることを鑑みると、『水分の過剰摂取は死を招くおそれがある』ことを広く啓発する必要がある」と説いている。


>>■■【動画】ブルース・リーのドキュメンタリー『Be Water(水になれ)』の予告動画

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

豪、中国軍機の照明弾投下に抗議 南シナ海哨戒中に「

ワールド

ルーブル美術館強盗、仏国内で批判 政府が警備巡り緊

ビジネス

米韓の通貨スワップ協議せず、貿易合意に不適切=韓国

ワールド

自民と維新、連立政権樹立で正式合意 あす「高市首相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中