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ウクライナ情勢

国際社会から同情されるウクライナも、一歩間違えれば反感を買う──ポーランド着弾が問う世界大戦リスク

Looming Escalation Risks

2022年11月22日(火)16時34分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ベルファーセンター国際関係論教授)

「ミサイルより破壊的」

この出来事、とりわけゼレンスキーの反射的な発言が印象付けたのは、ウクライナはこうした悲劇を利用してロシアをさらなる悪者に仕立て、これまで以上に世界の同情と支援を引き出そうとするということだ。

実際、ニューヨーク・タイムズの報道によれば、ゼレンスキーは16日夜の段階でも、「当初の調査結果に納得しておらず、依然としてロシアのミサイルの関与を確信していた」という。

ゼレンスキーにも何らかの考えがあったのだろうが、こうした態度は容易に反感を買う。フィナンシャル・タイムズは西側外交筋のこんな発言を伝えている。

「バカな話だ。ウクライナは(西側の)信頼を壊している。誰もウクライナを責めていないのに、公然と嘘をつくとは。こっちのほうがミサイルより破壊的だ」

「ウクライナを支援する」ことは、われわれの利益や懸念を棚上げにすることではない。それらがウクライナの利益や目的と必ずしも重ならないならなおさらだ。一国のまっとうな指導者は他国の利益のために自国の利益を犠牲にしないし、してはならない。

この戦争が拡大し、さらに多くの悲劇を招くとしたら、そのきっかけとなるのは偶発的な出来事だけではないし、偶発的出来事が引き金となる確率が最も高いわけでもない。

戦争当事国は得てして、越えてはならない一線が侵されたからでも、相手の意図を読み違えたからでもなく、敗色が濃くなったときに戦いをエスカレートさせる。

ドイツが第1次大戦で「無制限潜水艦作戦」、第2次大戦でV1、V2ミサイルの使用に踏み切ったのも、日本が太平洋戦争で特攻隊による自爆攻撃を始めたのもそのためだ。

今のロシアは既にこれと似た状況にある。数日か、せいぜい数週間で終わると思われていた「特別軍事作戦」は終わりの見えない消耗戦となった。ロシア軍は多大な犠牲を払い、何十万もの兵士を新たに動員せざるを得なくなった(開戦時にはプーチンが予想だにしなかった事態だ)。

交渉のみが危機を防ぐ

一方、ウクライナに味方する国々も外交、経済、軍事的支援を拡大。このプロセスに「偶発的な」要素など一切ないが、戦争は既にエスカレートしている。ウクライナ、ロシア双方が今はまだ交渉の余地はないと主張し、両者とも勝ちたい、少なくとも負けたくないと思っているからだ。

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