最新記事

米政治

「トランプは同盟に興味を示したことも理解したこともない」2期目トランプの外交・権力強化予測

IF HE WINS AGAIN

2022年11月16日(水)09時45分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)
ドナルド・トランプ

2017年1月、国家安全保障担当補佐官のフリン(中央奥)とバノン首席戦略官の前で電話するトランプ PETE MAROVICH-POOL-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<もしもトランプが2024年大統領選で勝ったら、ご法度の「軍を国内で使う」動きに出たり、ロシアや同盟国との関係を変える可能性がある(中編)>

※前編:トランプが次期大統領になったら「本当に常軌を逸したことが始まる」 人事、軍掌握、対ロシア より続く。

権力の強化策

周囲を追従者で固めたトランプは、バイデン政権の施策を取り消そうと大統領令を乱発する可能性が高い。

「2度目のチャンスを手にしたら、相手側が抵抗する前に素早く仕掛けるのが鉄則だ」と、リンカーン・プロジェクトのゲーレンは言う。

大統領令なら、議会を説得して法案を通さなくても経済政策から社会福祉まで、あらゆる政策を変更できる。トランプが1期目に署名した大統領令は220件に上る(バラク・オバマ元大統領の1期目は147件)。

大統領令はしばしば憲法上の「グレーゾーン」に位置付けられる。法律の制定を通じて国を統治する議会の権利と衝突するからだ。

例えば、トランプは大統領就任直後にオバマケア(医療保険制度改革)の無効化を狙う大統領令を出したが、この試みは失敗に終わった。

それでも、9人の連邦最高裁判事のうち6人を保守派が占め、その半数がトランプの指名であること、連邦裁判所全体でも現役判事の約4分の1をトランプが指名していることを考えると、大統領令が一定の効果を発揮する可能性はある。

トランプが権力強化のために次に手を付けるのは、おそらく米軍に対する支配力を強めることだろう。

憲法は大統領が国内で軍を使うことを禁じている。連邦政府の法執行機関を政治目的のために動かすことも、長年の慣行からご法度だ。

だがトランプは1期目の2020年、移民関税執行局(ICE)や税関・国境取締局を使い、「BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動」のデモ参加者を監視し、拘束した。首都ワシントンだけで700人もの捜査官が配置された。

このときトランプは、ホワイトハウス前にいた平和的なデモ隊を暴力的に排除させ、戦闘服姿のマーク・ミリー統合参謀本部議長らを引き連れて、近くの教会まで歩いて行くパフォーマンスをメディアに撮らせた。

ミリーはその後、内政に関わらないはずの米軍が、トランプの暴挙をサポートしているように見えることをしてしまったとして謝罪している。

トランプが大統領に復帰した場合、米軍を意のままに操り、法執行機関に命じて敵と見なす相手に嫌がらせをしようとする動きを一気に強めるかもしれない。手始めに自分に抵抗しそうな軍首脳を最大限入れ替えるだろうと、トレメインは主張する。

「自分に忠実な人間を軍に送り込めるようになる。それは確実だ」

トランプは米軍を支配下に置くため、巨額の国防予算を組むだろうと、チェイニー副大統領の国家安全保障担当副補佐官を務めたプリンストン大学のアーロン・フリードバーグ教授(政治・国際問題)は指摘する。

「国防費の優先順位は高いはずだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は3日続伸、900円超高 ハイテク株に買い

ワールド

柏崎刈羽原発6・7号機、再稼働なら新潟県に4396

ビジネス

午後3時のドルは一時154.89円まで上昇、34年

ワールド

印インフレにリスク、極端な気象現象と地政学的緊張で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中