最新記事

米政治

「トランプは同盟に興味を示したことも理解したこともない」2期目トランプの外交・権力強化予測

IF HE WINS AGAIN

2022年11月16日(水)09時45分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

221122p22_TRP_08.jpg

最高裁判事は9人の判事のうち保守が6人と大きくバランスを欠いている ERIC LEE-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

FBIを含む司法省の粛清人事と、民主党の政敵を調査し、リベラル派のデモを武力で抑え込む人物の幹部登用も早急に進めるはずだ。

「トランプはとにかく復讐したいのだ」と、ボルトンは指摘する。2020年大統領選の敗北とさまざまな調査や捜査の結果、トランプは自分を敗者と見なす風潮に対し、強い戦闘意欲を持つようになったという。

そのため政府のさまざまな部門が、トランプの怒りと不安をぶつける道具と化すだろう。

「司法省やIRSに政敵への監督と嫌がらせを指示するはずだ」と、ゲーレンは言う。

アメリカと世界の関係

連邦政府の大改造が終わったら、トランプは権力と影響力を行使する機会を海外に求めるだろう。2期目の政権ではNATO脱退や、日本と韓国を含む世界中の同盟国に対する安全保障措置の終了を実行に移す可能性が十分にある。

「彼は同盟関係に興味を示したことも理解したこともない」と、フリードバーグは言う。

トランプと関係の深いもう1つの組織、アメリカ再興センターの広報担当者はこう言う。

「外国との厄介な関わり合いを終わりにしたいと考えている。例えばウクライナ紛争に首を突っ込み、大金をつぎ込む必要があるというような考え方だ」

フリードバーグによれば、2期目のトランプは中国に対し、さらに強硬な態度を取り、台湾防衛の姿勢を強める可能性もある。また、プーチンを潜在的な同盟相手として扱い続ける可能性も高いと指摘する。

「トランプはプーチンの歓心を買いたいようだ。ウクライナを助けるために多くのことをすると言っているが、私は懐疑的だ」

ただし、トランプは衝動的な人間なので実際に何をするかは予測不能だと、フリードバーグは付け加えた。

トランプが外交分野で予測不能なのは、問題の把握能力が低いからだと、ボルトンは分析する。

「私が国家安全保障担当大統領補佐官だったとき、彼は多くの問題で私が言うことを理解していないようだった」

2期目の任期中に核危機が発生した場合、トランプの外交能力の低さがアメリカと世界を悲惨な状況に追い込みかねないと、ボルトンは主張する。プーチンが核兵器使用の脅しを繰り返している今、その可能性は高まっている。

「トランプが危険なのは、国家安全保障戦略における核兵器の意義を理解していないからだ」と、ボルトンは言う。

2期目のトランプは、貿易面でもアメリカに大きなプラスをもたらさないだろうと、ボルトンは予測する。

「トランプにとって重要なのは、誰よりも大きくて有利な合意をまとめることだ」と彼は語る。

「(1期目は)中国と『世紀の合意』をまとめて脚光を浴びようとしたが、うまくいかなかった。それがどんな合意なのか自分でも分かっていなかった」

おそらくトランプは、1期目の保護主義を復活させるのではないかと、フリードバーグは言う。追加関税をちらつかせて、同盟国から譲歩を引き出すおなじみのアプローチだ。

※後編:経済・移民・環境・宗教・医療・選挙権・3期目──トランプ「次期」大統領の野望が変えるアメリカ に続く。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中