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ペロシ宅襲撃事件は「夫と男娼の痴話喧嘩だった」説の出所

The Paul Pelosi Conspiracy Raced from the Fringe to Mainstream. Here's how

2022年11月8日(火)10時45分
ロレンツォ・アルバンテス、マッケンジー・サデギ(ニューズガード)

10月30日には、虚偽をまきちらす悪質なメディアは強力な味方を得た。ヒラリー・クリントン元国務長官が、ソーシャル・メディアで陰謀論を広めていたデペプの事件は「驚きではなかった」とツイートすると、その2日前にツイッターの買収を完了したばかりのイーロン・マスクが声をあげたからだ。

ツイッターで1億1300万人のフォロワーがいるマスクは、「この(陰謀)話には見かけ以上のものがあるかもしれない」とツイートし、サンタモニカ・オブザーバーの記事にリンクを張った。

リンク先のサンタモニカ・オブザーバーの記事は「恐るべき真相:ポール・ペロシは再び酔っ払い、金曜の早朝に男娼と口論していた」というタイトルで、「サンフランシスコのゲイバーで2人のゲイ男性が出会い、午前2時にバーが閉まると、一緒に家に帰った。この街では毎晩、起きていることだ。ただし、この2人の男性のうち1人はナンシー・ペロシ下院議長と結婚していた」という推論から始まる。

ツイッターを買収したイーロン・マスクは陰謀論者?ペロシ夫襲撃について、トンデモ理論を支持

根拠がなくても広がる物語

記事はこうした根拠のない主張だけでなく、デパピが「下着姿だった」など、当時ネット上で流れていた噂の数々を引用している。激しい反発を受けて、マスクは自分のツイートを削除したが、それは約9万9000の「いいね!」がついた後だった。サンタモニカ・オブザーバーは11月1日に問題の記事をウェブサイトから削除した。

劇的なニュースの後に荒唐無稽な陰謀論が広まると言う現象は、今に始まったことではない。だがソーシャル・メディアの環境ではこうした現象が生まれ、誤った物語がものすごい速さで拡散してしまう。

ポール・ペロシ襲撃事件に関する間違いだらけの報道が示すように、ニュースの消費者が情報を速く得ることを期待すると、不完全で、時には細部の間違いがある状態で発表された記事が、ツイッターなどのプラットフォーム上のエコーチェンバー効果で強化され、広範囲に拡散する虚報に簡単に変わってしまう。#Pelosigaylover(ペロシのゲイの恋人)というハッシュタグは11月3日までにツイッター上で少なくとも4万回投稿された。

陰謀論が広まったのは、マスクの一度だけの投稿や、ローカルニュースの不正確な報道、権威に対する不信感の高まりだけによるものではない。これらがひとつになって根拠のない物語になり、インターネットの隅々にまで急速に浸透していった。

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