最新記事

中国

iPhone工場の騒乱があぶり出したゼロコロナの大矛盾

iPhone Factory Workers Clash With China's Riot Police Over COVID Fears

2022年11月24日(木)19時04分
ジョン・フェン

地元当局はこの騒ぎについてコメントを控えているが、フォックスコンは23日に声明を発表。鄭州の自社の工業団地で「暴力騒ぎ」が起きたことを認め、「今回のような騒ぎを2度と起こさないため」従業員及び地元当局と話し合いを行うと述べた。

同社はまた、賞与は契約どおりに全額支給すると約束。寮内での感染者の隔離が不十分だという主張は事実ではなく、新たに雇い入れた従業員を迎える前に、寮の消毒作業を終え、地元当局の検査も受けたと述べた。

ゼロコロナは、中国の習近平(シー・チンピン)主席の公衆衛生上の看板政策だ。中国はこの政策で2年間コロナを抑え込むことに成功したが、感染性の高いオミクロン株が猛威を振るいだした今春以降、この政策の有効性が疑問視され、厳しいロックダウンに市民の不満が噴き出すようになった。

そうした不満を抑え込むため、中国当局はオミクロン株は重症化率が低いのを知りつつ、コロナは依然として致死性の高い怖い病気であり、感染が広がれば多数の死者が出るという警告を発し続けている。

フォックスコンの工場で10月末以降に労働者の大脱出が始まったのも、こうした警告のせいだろう。労働者の多くは寮から数十キロ先の出身地まで徒歩で逃げ帰ったという。

地元当局が人手不足を解消

世界で販売されるiPhoneの70%はこの工場で組み立てられているため、ここで騒ぎが起きれば、iPhoneの供給に直接支障をきたすことになる。

「コロナによる規制で、中国・鄭州にあるiPhone14ProとPro Maxの主要な組立工場は一時的に影響を受けた」と、カリフォルニア州クバチーノに本社を置くアップルは11月初めに発表した。

アップルはサプライチェーンの多様化のため既に委託先をインド企業に切り替え始めており、河南省当局は地元に金を落としてくれるグローバル企業に逃げ出されては大変と、フォックスコンの工場周辺の村や町に大号令をかけ、人手不足を補う臨時の補充要員をかき集めた。共産党の下級幹部まで動員されたもようだ。

臨時の人材募集には10万人を超える応募があったと、フォックスコンの幹部、ヤン・ハンは、中国の政府系経済メディア「第一財経」オンライン版に語っている。

「次のステップは、引き続き工業団地でしっかりと感染対策を取ること」だと、ヤンは述べ、「非常に厳しい時期」に助けてくれた地元当局に感謝の意を表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

内田副総裁が白血病治療で入院、入院期間は数週間の見

ビジネス

新発10年国債利回りが1.705%に上昇 17年半

ビジネス

日本郵政、通期純利益予想3200億円に下方修正 物

ビジネス

ニデック、半期報告書のレビューは「結論不表明」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中