最新記事

ウクライナ

ゼレンスキーに「覚悟」が生まれた瞬間──プーチンとの「戦前対決」で起きていたこと

ROLE OF A LIFETIME

2022年10月21日(金)18時15分
セルヒー・ルデンコ(ジャーナリスト)
ゼレンスキー

今年3月、首都キーウで国民に向けて演説するゼレンスキー UKRINFORMーFUTURE PUBLISHING/GETTY IMAGES

<プーチンも相当な「役者」であることを忘れていた、元コメディ俳優の大統領。彼が演技を捨て、自国の状況を世界に訴える本当のリーダーになるまで。伝記から読み解く、ゼレンスキー大統領とは?>

今年2月24日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに侵攻を開始したとき、ウクライナがすぐに降伏するだろうと考えた人は少なくなかった。ところがウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はロシアに屈するのを拒み、暗殺の危機を何度もくぐり抜け、国民を戦いに向けて鼓舞した。国際社会に対しては、ロシアへの制裁とウクライナへの兵器・弾薬の供与を訴えた。

ゼレンスキーはコメディー俳優から政治家になった。テレビドラマ『国民の公僕』で、やはり素人から政治家になった元高校教師を演じたことでも知られる(ネットフリックス日本版では『国民の僕(しもべ)』のタイトルで配信中)。

ウクライナのジャーナリストで政治評論家のセルヒー・ルデンコは新著『ゼレンスキーの素顔──真の英雄か、危険なポピュリストか』(邦訳はPHP研究所)で、ゼレンスキーの子供時代から戦争の始まりまでを振り返り、その人生と政治スタイルを読み解いた。以下は同書からの抜粋。ゼレンスキーがいかに変身を遂げ、プーチンという人間の本質を見定めたかを描いた核心部分だ。

◇ ◇ ◇


初めに言葉ありき。もっと正確に言えば、『国民の公僕』というテレビドラマのタイトルがあった。

そして、同じ名前の政党が生まれた。イデオロギーもなく、地方支部もなく、党員もいない政党が。

支えてくれるものが何一つない状況で、この党は2017年12月時点で国民の4%の支持を集めていた。

支持者の多くにとって「国民の公僕」党は政治エンターテインメントだった。人々はコカ・コーラやピザ、ケバブサンドを食べながら集会に参加し、人気俳優との自撮りを楽しんだ。ゼレンスキーの大勝利も、映画の一場面のような就任式も、若くてハンサムで切り返しのうまいリーダーの存在もエンタメの一部だった。

だが支持の急速な高まりは、同党が生身のゼレンスキーというより、ドラマの主人公バシリ・ゴロボロジコのプロジェクトであるかのように受け止められていたという事実の裏返しでもあった。

自身の魅力を過信したか?

19年4月21日午後8時。ゼレンスキーとそのチームは、ドラマで使われた「私は自分の国を愛す」という曲と共に記者会見場に姿を現した。まだこのときは、ゼレンスキーと主人公のキャラクターは重なっていた。

ウクライナの第6代大統領となったゼレンスキーは「皆さんを決して失望させないと約束します」と述べた。以来、私たちはさまざまな状況下でゼレンスキーを見てきた。彼とそのチームは素人だと批判されてきた。汚職や傲慢さ、国への反逆で非難されたこともある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州の2人銃殺事件、FBIがテロ関連性捜査

ワールド

中国2月新築住宅価格、3年2カ月ぶりの落ち込み 不

ワールド

カナダGDP、第4四半期は年率0.6%減 予想下回

ワールド

ハメネイ師死亡で悲嘆と祝賀が交錯、イランの分断あら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報復攻撃、民間インフラも対象に
  • 4
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 5
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 6
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 9
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 10
    最高指導者ハメネイ師死亡(イラン発表)、トランプ…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中