最新記事

ロシア軍事

プーチンは1000万や2000万人の犠牲は厭わない

Putin's 'Luck Is Over' in Ukraine War: Former Russian Diplomat

2022年10月24日(月)17時24分
ザンダー・ランデン

リモートで安全保障会議を開くプーチン(10月19日) Sputnik/Sergey Ilyin/Kremlin via REUTERS A

<劣勢に立たされるロシア軍が、不名誉な撤退を糊塗するための「偽旗作戦」に出る可能性も>

元ロシア外交官のボリス・ボンダレフはテレビ局の取材に答え、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「運は尽きた」との見方を示した。

ボンダレフはジュネーブのロシア国連代表部に勤務する外交官だったが、ロシアによるウクライナ侵攻に抗議して5月に辞職。その際に発表した書簡で彼は、「(侵攻は)ウクライナの人々に対する犯罪であるばかりか、ロシアの人々に対するこの上なく深刻な犯罪だ」と述べている。

ボンダレフは10月23日に放送されたスカイ・ニュースのインタビューでこう述べた。「権力の座にあった20年間、プーチンは運がよかっただけだと思う。賢いのではなく、単に運がいいだけだ。もはやその運も尽きた」

またボンダレフは、プーチンは「この戦争に勝ち、ウクライナ人をせん滅するためだけに1000〜2000万人のロシア人を犠牲にする」ことも辞さない、との見方を示した。「(この戦争が)信条の問題であり、彼にとっては政治生命の問題だからだ」

「理解しなければならないのは、敗戦は彼にとって終わりを意味するということだ」とボンダレフは述べた。

またボンダレフは、もし戦争に負ければプーチンは「社会の中枢にいる人々にも一般国民にも、なぜそうなったのか説明しなければならないだろう。説明するにあたって都合の悪いことが出てくるかも知れない」とも述べた。

偽情報を拡散するためにインフラ攻撃?

ロシア軍は侵攻開始直後の2月から占領を続けていた南部ヘルソン州で劣勢に立たされている。アメリカのシンクタンク戦争研究所が先ごろ出したリポートによれば、ロシアは「計画中のロシア軍の撤退や、ヘルソン州でかなりの広さの占領地を失ったことを正当化するために」口実となる状況をあらかじめ設定しておこうとしているという。

戦争研究所はまた、ロシア軍はいわゆる「偽旗作戦」を計画していると指摘する。つまりウクライナ軍のふりをして、ヘルソン市の東50キロ圏内にあるカホフカ水力発電所を攻撃しようとしているというのだ。

「ロシア政府はそうした偽旗攻撃をヘルソン州西部で行い、ロシア軍の3つめの惨めな撤退のニュースをウクライナの汚い攻撃のせいにしようとするかも知れない」と戦争研究所は指摘する。「そうした攻撃は、ウクライナを『一般市民を故意に標的とするテロ国家』として描くロシアの偽情報作戦の一環でもあるだろう」

ロシア政府は20日、不法に併合を宣言したウクライナ東部4州に戒厳令を敷いた。ヘルソン州もその対象だ。一方でロシア軍が占領地域から撤退しているとのニュースも相次いでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国は「経済的大惨事」に、関税違憲判断なら トラン

ワールド

ウクライナ当局、国営原子力企業が絡む大規模汚職捜査

ビジネス

NY外為市場=円下落・豪ドル上昇、米政府再開期待で

ワールド

再送-〔マクロスコープ〕高市氏、経済対策で日銀に「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中