最新記事

日本

日本の「余裕」から生まれる放任のありがたさ(小原ブラス)

SOCIAL LEEWAY

2022年8月8日(月)16時00分
小原ブラス(タレント、コラムニスト)
小原ブラス

関西育ちの外国人タレント/コラムニストであり、「外国人の子供たちの就学を支援する会」理事長も務める小原ブラス氏 Courtesy Almost Japanese Inc.

<マイノリティーの暮らしやすさには、経済だけでなく考え方にもゆとりが必要――ロシア生まれ・関西育ち、ゲイをカミングアウトしている小原氏は言う>

暮らしやすさについてあえて考えなくていい程度には、日本は暮らしやすいと思う。

ソ連崩壊後のロシアに生まれて5歳から兵庫県姫路市で育った僕の経験からすると、基本的に性や国籍、性的指向などの多様性が受け入れられる国はある程度の経済的余裕がないと成立しない。マジョリティーが余裕のない状況では少数派の権利にも目を向けられないから。
2022080916issue_cover200.jpg

例えば、日本では電車に痴漢防止のカメラが付いていたり、女性専用車両があったりする。視覚障害者のための点字ブロックも多い。でも時々帰郷するロシアでは見たことがない。

弱い立場の声も無視せず社会として取り組まんとあかんな、という姿勢は意外と世界では当たり前じゃない。これも日本が寛容、というか「余裕」のある国だからだと思う。

ロシアには電車の優先席もない。でも実は、高齢者などに譲らないといけないルールは日本よりも厳しい。

これは良い面に見えるかもしれないけど、結構周りが注意する社会ということでもある。ロシアで男がスカートをはいて街を歩けば「なんで?」とめちゃくちゃ声を掛けられる。

magSR20220808socialleeway-2.jpg

服装が個性的でもとがめられない自由が日本にはある(東京・原宿) HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

日本では例えばロリータファッションとか「普通」じゃない格好をする人がいても、「なんかおるわ」と思いつつ面と向かっては言わない。それがマイノリティーにとって結果的に行動しやすい社会になっている。

多少の無理解はあるし、同性婚など社会の仕組みとして変えていかなければいけないことはまだ多い。でもLGBTQ(性的少数者)だからといって石を投げられないし、僕もゲイとして差別を受けたためしはない。

日本でも都会と田舎は違う。自分も東京に来るまでゲイをカミングアウトしなかったし。ただそれは例えば姫路というより、学校の問題かな。厳しいルールがあるし、子供は人と違うとからかう同調圧力もある。

都会に行くと、多様なマイノリティーが集う「逃げ場」がそれぞれあって孤立しないのがええんやろな。似たような人がいるだけで安心できる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の不当な攻撃、「世界を危険にさらす」とプーチン氏

ワールド

米国のイラン攻撃、国際法でどのような評価あり得るか

ワールド

ウクライナ首都と周辺に夜間攻撃、8人死亡・多数負傷

ワールド

イスラエル、イラン首都に大規模攻撃 政治犯収容刑務
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中