最新記事

米中対立

米ペロシ議長が台湾に向かうなか、中国は「空母キラー」ミサイル発射映像を初公開

2022年8月2日(火)17時01分
ミーラ・スレシュ
東風17ミサイル

2019年の国慶節に行われた軍事パレードでお披露目された「DF-17」ミサイル Jason Lee-Reuters

<ペロシ米下院議長による訪台の観測に神経を尖らせる中国が、「建軍節」に合わせて極超音速滑空ミサイル「東風17」の発射映像を公開した狙い>

本日8月2日の夜にもナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問すると見られ、米中間の緊張が高まるなか、中国が「空母キラー」の異名を持つ極超音速滑空ミサイル「東風17(DF-17)」の発射とみられる映像を公開した。映像には、砂漠に設置された移動式発射台から、ミサイルが発射される様子が映っている。

■【動画】移動式発射台から発射される「東風17」ミサイルと見られる映像

アナリストたちは、中国人民解放軍の創設95周年に合わせて公開されたこの映像について、アメリカに対して「あくまで挑発してくるなら、人民解放軍はあらゆる手を尽くして対抗する」というメッセージだと考えている。

「81秒で示す中国軍の能力」と題された映像は、8月1日の「建軍節(軍創設記念日)」を祝うために、7月30日に国営の中国中央電視台(CCTV)で放送された。

しかし中国共産党機関紙人民日報系のタブロイドである「環球時報」は、ペロシが台湾を訪問する可能性があるなか、今回の映像にはもっとずっと重要な意味があると示唆している。ペロシは7月31日からアジア歴訪を始めたが、台湾を訪問するかどうかは明らかにしていない。中国はアメリカに対して繰り返し、ペロシの台湾訪問に反対を表明して警告をしてきたが、ジョー・バイデン米政権もペロシも、訪台については一切正式に確認をしていない。

「いつでもどこでも発射可能なミサイル」

それでも中国がこのタイミングの映像公開を決めたことに、軍事愛好家やアナリストは注目している。

「東風17」は、2019年10月1日の建国記念日のパレードで初めてお披露目された極超音速ミサイルだ。「空母キラー」の異名を持ち、中国人民軍は同ミサイルについて、領土保全のために役立つきわめて重要な兵器だと考えている。専門家によれば、東風17は南シナ海、台湾海峡や北東アジアを含む全ての地域を射程内に収めている。

中国の軍事専門家である宋忠平は環球時報に対して、「(東風17が)砂漠を通る高速道路から発射可能ということは、あらかじめ決まった場所に発射台を設置しておく必要がないということだ」と指摘。いつでもどこでも発射が可能で、機動性と柔軟性に富んでいると述べた。

台湾本島に近い海域での軍事演習も

中国は8月1日の建軍節に向けて、最新の兵器だけでなく「具体的かつ現実的な戦闘準備」を誇示する準備を行ってきたとされている。環球時報は、建軍節に合わせて行われる一連の軍事演習が、「見掛け倒し」にすぎない「台湾の分離独立主義者」や外部からの介入を追い払うものになるだろうと報じた。

中国はまた、過去数日にわたって南シナ海、東シナ海と黄海の全域(平潭島付近の海域も含む)で、現実的なシナリオに沿った実弾発射を伴う軍事演習を行っている。平潭島は台湾海峡を挟んで、台湾本島からわずか125キロの距離にある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NTT、本社を日比谷に移転へ 2031年予定

ワールド

アングル:戦死・国外流出・出生数減、ウクライナ復興

ワールド

アングル:日銀、先行き利上げ判断で貸出動向に注目 

ワールド

米新安保戦略、北朝鮮非核化を明記せず 対話再開へ布
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中