最新記事

ウクライナ情勢

ロシア軍、黒海の戦略的前哨基地・蛇島から撤退 港湾封鎖緩和か

2022年7月1日(金)09時45分
黒海の蛇島

ロシア軍は30日、黒海の戦略的前哨基地である蛇島から引き揚げた(2022年 ロイター)

ロシア軍は30日、黒海の戦略的前哨基地である蛇島から引き揚げた。ウクライナ側が勝利した格好でロシアによるウクライナの港湾封鎖の手が緩む可能性がある。

ロシアは、ウクライナからの穀物輸送を可能にする人道的回廊設置に向けた国連の取り組みをロシアが妨害していないことを示すために、「善意のしるし」として蛇島からの撤退を決定したと発表した。

一方、ウクライナはロシア軍が夜間の砲撃とミサイル攻撃を受けて撤退したと発表。

ウクライナのイェルマーク大統領府長官は30日、ツイッターで「蛇島にロシア軍はもういない。わが軍が素晴らしい仕事をした」と述べた。

一方、バイデン米大統領は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議閉幕後に米政府が数日中にウクライナに対する8億ドル規模の追加軍事支援を発表すると表明。米国およびNATO加盟国はロシアのプーチン大統領に立ち向かうために結束していると述べた。

また、記者会見で「どのような結末を迎えるのかは分からないが、ロシアがウクライナで敗北するだけでは終わらないだろう。ウクライナはすでにロシアに深刻な打撃を与えている」とし、「われわれはウクライナをいつまでも支援していく」と語った。

煙と炎

ウクライナ軍は上空から蛇島を撮影したとみられる画像をフェイスブックに投稿。数本の黒煙が立ち上がる様子が映され、「(敵軍は)島を後にしたようだ。現在、蛇島は炎に包まれ、爆発が起こっている」とした。

ウクライナ軍幹部によると、ウクライナ軍はまだ蛇島を占領していないが、占領するつもりだという。

米国を拠点とする外交政策研究所(FPRI)のロブ・リー氏は「最も重要な点はウクライナ経済と世界の食料供給に不可欠な港湾都市オデーサ(オデッサ)からの穀物輸出に道が開かれる可能性があることだ」と述べた。

また、ロシアが蛇島から撤退したのは「NATOがウクライナに兵器を提供した結果だ」とした。

ブリンケン米国務長官はロシアが意図的に世界の飢餓を引き起こし「脅迫」していると非難しているのに対し、ロシア側は港湾の封鎖を否定し、西側諸国の制裁によってロシアの輸出が制限され食料不足を招いていると主張している。

プーチン大統領は30日、ロシアはウクライナの穀物輸出を妨げていないとした上で、ウクライナの農産物が世界の食料市場から失われたとしても影響は軽微との見方を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランとイスラエル、再び互いを攻撃 米との対話不透

ワールド

米が防衛費3.5%要求、日本は2プラス2会合見送り

ビジネス

トヨタが米国で値上げ、7月から平均3万円超 関税の

ワールド

トランプ大統領、ハーバード大との和解示唆 来週中に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 7
    ジョージ王子が「王室流エチケット」を伝授する姿が…
  • 8
    イギリスを悩ます「安楽死」法の重さ
  • 9
    「巨大キノコ雲」が空を覆う瞬間...レウォトビ火山の…
  • 10
    中国人ジャーナリストが日本のホームレスを3年間取材…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中