最新記事

パンデミック

新型コロナで主流となったオミクロン株「BA.5」特徴まとめ

2022年7月14日(木)19時33分
新型コロナウイルスのワクチン接種をうける女性

世界で今、新型コロナウイルス感染の主流になっているのはオミクロン株派生型の「BA.5」だ。写真は昨年11月、フランス西部アンスニ・サン・ジェレオンでワクチン接種を受ける人(2022年 ロイター/Stephane Mahe)

世界で今、新型コロナウイルス感染の主流になっているのはオミクロン株派生型の「BA.5」だ。

世界保健機関(WHO)が直近でまとめた報告書によると、6月終盤時点で解析した検体のうちBA.5の比率は52%弱と1週間前の37%から跳ね上がった。米国では感染者の約65%はBA.5と推定されている。

感染者数が増加

BA.5は最近登場したわけではない。初めて検出されたのは今年1月で、WHOは4月以降、動向を追い続けている。昨年末から世界で主流となったオミクロン株の派生型の1つであるBA.5は、検査数が減っている中でもいくつかの地域で感染者数増加をもたらしている。最初に見つかった南アフリカや英国、欧州の一部、オーストラリアなどだ。

世界全体でも新型コロナウイルス感染者数は4週連続で増えていることが、WHOのデータで確認できる。

感染拡大の理由

系統が近いBA.4と同様、BA.5はワクチンや以前の感染で得られた免疫をうまく回避する能力を備えている。このため、WHOの疫学者、マリア・バンケルホフ氏は12日の会見で「BA.5は現在出回っている他のオミクロン株系統よりも伝播しやすい」と指摘した。

つまり多くの人にとっては、しばしば短期間に再感染してしまう。バンケルホフ氏は、WHOが再感染の報告事例を検証していると明かした。

米ミネソタ州ロチェスターのメイヨー・クリニックでワクチンとウイルス学を研究するグレゴリー・ポーランド氏は「過去にオミクロン株に感染した人がBA.5に感染しているという証拠は十分にある。そこに疑問の余地はない」と述べた。

重症化は進まず

一部の国では感染者数増加が入院患者数を押し上げているものの、死亡者数は劇的には増えていない。

これは主に、ワクチンが感染を防げないとしても、重症化や死亡を阻止し続けているということが理由だ。また、製薬会社や規制当局は、BA.5など新手のオミクロン株派生型を直接標的にするワクチンの改良も目指している。

BA.5が他のオミクロン株系統に比べて危険性が大きいという証拠も出ていない、とWHOのバンケルホフ氏は強調した。ただ、感染者増加によって医療サービスがひっ迫し、コロナ後遺症患者が多くなるリスクはある。

一方、WHOや他の専門家は、ワクチンの供給格差や多くの国に存在する「ポストコロナ」に踏み出したいとの願いが、さらに新しく予測不可能な変異株の登場につながるだろうとみている。

専門家が既に目を向けているのは、インドで初めて検出され、変異部分が多く感染力が強いBA.2.75だ。

WHOは12日、パンデミックは引き続き世界の公衆衛生面での緊急問題であり続け、各国は感染が急増した場合、ワクチンとともにマスク着用や距離の確保といった感染対策を考慮すべきだと訴えた。

ポーランド氏は「人々が基本的に理解していないのは、社会においてこれほど高水準の市中感染が起きている局面では、ウイルスが変異するという事実だ。次にやってくるウイルスの正体は誰も分からない。とても危険だ」と警告した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル北部の警報サイレンは誤作動、軍が発表

ワールド

イスファハン州内の核施設に被害なし=イラン国営テレ

ワールド

情報BOX:イランはどこまで核兵器製造に近づいたか

ビジネス

マイクロソフトのオープンAI出資、EUが競争法違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中