最新記事

裁判

「ハチは魚である」と裁判所が認める 米

2022年6月14日(火)18時10分
青葉やまと

「ハチは魚か」論争は、二転三転してきたが...... GoodLifeStudi-iStock

<カリフォルニアの裁判所は、特定の条件においてハチを魚とみなすことができると判断した>

地元団体らの訴えにより、予想もつかない判決が生み出された。米カリフォルニア州の高等裁判所は5月31日、特定の条件においてハチを魚とみなすことが妥当であるとの判決を下した。判決はミツバチに似た仲間の「マルハナバチ」のうち4種について、魚類に含めることが可能だとの判断を示している。

裁判では、地元の複数の公益団体がカリフォルニア州魚類狩猟委員会に対し、同州の絶滅危惧種法が危惧種として指定しているリストに新たに4種のハチを加えるよう求めていた。問題は、焦点となっている絶滅危惧種法が、魚など水生動物を想定したものである点だ。しかし原告側は、同法の「魚」の定義の不備を突いてハチを保護対象に含める戦略をとり、勝訴した。

絶滅危惧種法は魚類を対象とすることを明記しており、その定義として、「野生の魚、軟体動物、甲殻類、無脊椎動物、両生動物、あるいはこれらの動物の一部分、稚魚、もしくは卵」と定めている。原告側は無脊椎動物が魚の定義に含まれることに着目し、無脊椎動物であるハチは同法の保護対象であるとの理論を展開していた。

高裁の判決はこの主張を支持し、同法に定義する魚類にハチが含まれると判断した。判決を受けて米CNNは、『カリフォルニアのfishyな(胡散臭い/魚臭い)判決: カリフォルニアの裁判所が特定の条件のもと、ハチは魚であると法的に認められるとの裁定を下す』と報じている。

二転三転してきた「ハチは魚か」論争

今回の裁判は控訴審であり、ことの発端は2018年に遡る。この年、食の安全センター、ゼルセス無脊椎動物保護協会、および野生生物保護者の会が共同で、カリフォルニア州魚類狩猟委員会に対し、4種のマルハナバチをカリフォルニア州絶滅危惧種法の保護対象とするよう求めた。今回の裁判と同様、無脊椎動物にハチが含まれるとの論理だ。

魚類狩猟委員会は翌年この主張に応じ、4種のハチを保護リストに加える。だが、地元の7つの農業団体が反発し、決定の破棄を求める訴訟をサクラメント郡高等裁判所に起こした。同高裁が農業団体らの主張を認め、保護は2020年になって一旦解除されている。

高等裁は当時、魚類の定義に示されている「無脊椎動物」は海洋性無脊椎動物のみを指し、保護派が主張するハチなどの昆虫は同法の対象に含まれないと判断した。さらに、カリフォルニア州魚類狩猟委員会には昆虫類を保護対象に指定する権限がないとも指摘している。

これに対して控訴裁は今回、従来の裁定を覆し、絶滅危惧種法が定義する「魚」に4種のハチを含めることが可能だとの判断を下した。判決文は、「魚という用語は日常会話および一般的解釈においては水生種を指す」と通常の解釈を確認したうえで、「議会が魚を定義した第45条の専門用語は、さほど限定的なものではない」と指摘した。少なくとも同法の解釈上、ハチを魚類の一種だと捉えることは妥当だとの判断だ。

なお、農業団体側が今回の判決を不服とする場合、カリフォルニア州最高裁に上訴する可能性が残されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ウーバーに米陪審が850万ドル支払い命令、運転手に

ビジネス

ウィンクルボス兄弟の暗号資産交換所が最大200人削

ワールド

米・アルゼンチン貿易協定、米製品優遇と重要鉱物協力

ワールド

韓国外相、投資意図的に遅らせずと米に伝達=聯合ニュ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 2
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 10
    関税を振り回すトランプのオウンゴール...インドとEU…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中