最新記事

ネオナチ

NATOが慌てて削除、ウクライナ女性民兵の紀章「黒い太陽」はなぜ問題か

NATO Says It Didn't Notice Ukraine Soldier's Apparent Nazi Symbol in Tweet

2022年3月10日(木)18時46分
トム・オコナー

「第2次大戦後に極右とネオナチがこれを重要な意味を持つシンボルに祭り上げたが、問題の写真のようなマークが使われだしたのは1990年代になってからだ」

ナチズムとこのシンボルの直接的な関連性を物語るよく知られた話がある。SSの長官だったハインリヒ・ヒムラーが本拠地としていたドイツ北西部の古城ベベルスブルク城の床にこのシンボルが描かれていたことだ。世界の中心とされるこの城で、ヒムラーはオカルト的な秘儀をしていたと言われている。だがストルーブによると、黒い太陽の図案を極右が好んで使うようになったのはここ数十年のことだ。

ベベルスブルク城の装飾を見ると、このシンボルはSSと関連がありそうだが、ただの文様だったのか、そこに何らかの意味があったのかは不明で、ナチスの思想と結びついたシンボルとなったのは「戦後、それもかなり近年になってから」だと、ストルーブは言う。「今では極右の間で、自分たちの属性を示す印として使用されている」

黒い太陽が何を表すかについてはさまざまな解釈があるものの、今どきこのシンボルを使うのは「極右かネオナチだけだと見ていい」というのだ。

「SSの秘儀のシンボルだったとの解釈もあり、極右と親和性がある北欧とスラブ民族のオカルト的な儀式と関連があるかもしれないが、ただ単にナチスの鉤十字の代わりに使われているのかもしれない。鉤十字は数カ国で使用が禁止されているからだ」

Tシャツやタトゥーにも

ウクライナでは、2015年に制定された法律でナチズムだけでなく共産主義のシンボルも公式に使用することは禁じられている。アゾフ連隊は黒い太陽を紀章にしているので、ウクライナでこのマークを付けている人がいたら、この組織のメンバーかその支持者と見ていいと、ストルーブは言う。

ユダヤ人組織「名誉毀損防止連盟」付属の研究所の上級研究員で、極右やネオナチに詳しいマーク・ピッカベージも同意見だ。

「ゾネンラート、つまり日輪は多くの文明に共通する古代のシンボルで、さまざまなバリエーションがある」と、ピッカベージは言う。だが古代にルーツを持つ卍模様と同様、日輪も「ナチスが独自のバージョンを作り上げ、白人至上主義者たちはそれを採用している」という。「(日輪は)ナチスのシンボルとしてはそれほど広く使われていなかったが、SSが使っていたので、エリートのシンボルと見られるようになった。今ではこれを愛用するのは極右だけだ」

「ナチスの第三帝国が崩壊した後、ネオナチ、そして、その後はその他の白人至上主義者たちが、ナチスが使っていた多くのシンボルを採用した」と、ピッカページは説明する。「ナチス版の日輪もその1つだ。シンボルにはよくあることだが、この5、6年で急に人気が出て、白人至上主義者の御用達のシンボルとなり、(Tシャツなどの)図柄に使われ、日輪のタトゥーを入れる連中も出てきた」

「(この紀章が)軍服についているのも、同じようにネオナチズムや白人至上主義の印象を与える」と彼はつけ加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン戦争開始から2週間、双方が徹底抗戦の姿勢 死

ワールド

米・チリ、レアアースなど重要鉱物巡る協議開始で合意

ワールド

原油先物下落、米がロシア産石油購入を30日間許可

ビジネス

金融市場に大きな変動、 極めて高い緊張感持って注視
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 8
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中