最新記事

ネオナチ

NATOが慌てて削除、ウクライナ女性民兵の紀章「黒い太陽」はなぜ問題か

NATO Says It Didn't Notice Ukraine Soldier's Apparent Nazi Symbol in Tweet

2022年3月10日(木)18時46分
トム・オコナー

国際女性デーにちなんで、勇敢な女性兵士の写真を使ったつもりだったのだが GENERAL STAFF OF THE ARMED FORCES OF UKRAINE

<問題となった紀章が示すように、ウクライナにも極右やネオナチはいる。旧ソ連から独立するためナチスを頼った過去もある。ではプーチンが侵攻の口実にした「ウクライナの非ナチ化」も本当なのか>

3月8日の国際女性デーにNATOの公式ツイッターにアップされた画像が波紋を巻き起こしている。

そこにはロシアの軍事侵攻開始から3週目を迎えつつあるウクライナで、必死に生きる女性たちの写真が4点含まれていた。その中の1点に、迷彩服の胸にナチスのシンボルとおぼしき紀章をつけた民兵が写っていたのだ。

この画像は既に削除され、NATO高官は本誌の取材に対し、紀章をうっかり見落としていたと話した。

NATOの公開画像にはウクライナの国旗を表す絵文字と共に、以下のようなメッセージが添えられていた。

「全ての女性たち、少女たちは、自由で平等な世界で生きる権利がある。今年の国際女性デーには、私たちはとりわけウクライナの勇敢な女性たちに思いを寄せている。彼女たちの強さ、勇気、苦境から立ち直る力は、彼女たちの祖国の#IWD2022(IWDは国際女性デーの略)の精神の生きた証である」

問題の紀章は、ドイツ語でシュバルツェ・ゾンネ(黒い太陽)またはゾンネンラート(日輪)と呼ばれるもの。ナチスのオカルト的な秘儀に使われたとされるシンボルで、今では世界中の極右が誇らしげに見せつける図案となり、ウクライナの準軍事組織「アゾフ連隊」の公式ロゴともなっている。

SSエリートの象徴とされ

女性民兵の写真は元々、2月14日にウクライナ政府軍の参謀本部がソーシャルメディアで公開し、通信社などが配信したもので、翌日には英紙ガーディアンの1面に大きく掲載された。ただし、彼女が着用しているカーキの迷彩服の柄に紛れて、紀章そのものははっきり見えない。

NATOがこの写真を使ったコラージュ画像を公開した後、ツイッターの複数のユーザーが気づいて指摘し、急きょ削除されたのだ。

「私たちは国際女性デーに合わせたコラージュに、通信社が配信した写真を使った」と、NATO高官は本誌に説明した。「公式なものと確認できないシンボルが含まれていると気づいて、すぐに削除した」

黒い太陽は、聖書の黙示録の解釈として中世から提唱されてきた理想の国家「第三帝国」の紋章として、ナチス親衛隊SSが神聖視していたと見られ、ナチスの第三帝国が滅びた後も極右の間で受け継がれてきた。

「黒い太陽のコンセプトは、1950年代にナチスの残党やネオナチの間で、SSの秘儀に参加していたナチスのエリートと彼らの持つ超自然的なパワーなるものと絡めて盛んに語られていた」と、このシンボルについて論じた著書があるウィーン大学の助教ジュリアン・ストルーブは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中