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習近平はウクライナ攻撃に賛同していない――岸田内閣の誤認識

2022年2月20日(日)11時17分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

あの中国「ご自慢」の空母第一号「遼寧」が、ウクライナから譲り受けたものであることは周知の事実だ。

中国大陸のネットには「中国とウクライナの軍事協力を暴く:大量のウクライナの専門家が、ありったけの知識を授けるために中国にやってきた」という、2014年3月12日付の情報が残っている。このようなインサイダー情報を暴いてしまっていいのかと思うほど、ソ連崩壊後のウクライナの科学者たちの動きが生き生きと描かれている。

また非常に新しい情報として、当時の事情を知っているであろう者(ハンドルネーム:孤影瀟湘)のブログとして、「200名のウクライナ専門家が中国に移住して、家賃免除で就業し、わが国の科学技術研究開発を支えている」という情報が今年2022年2月8日に公開されているのを発見した。

それらによれば、こうだ。

●旧ソ連時代のウクライナの軍事産業は実に輝かしいものだった。ウクライナの軍事産業は旧ソ連の軍事力の30%を占めていた。ウクライナの多くの企業や研究機関は、主に機械製造、冶金、燃料動力産業、ハイテク部門に集中し、特にロケット装置、宇宙機器、軍艦、航空機、ミサイルなどの軍事製品を生産することに特化していた。

●ウクライナは世界第6位の戦略的弾道ミサイル生産国であり、世界最大のミサイルメーカーの1つもウクライナにあった。 旧ソ連の地対空ミサイルの62%、戦略ミサイルの42%を生産していた。ミサイル製造工場は、主として10個の核弾頭を搭載できるSS-18型戦略ミサイルを生産し、同時にSS-24型ミサイルや、その改良型であるSS-25鉄道車両搭載(発射台移動式)弾道ミサイルをも生産していた。

●しかしソ連崩壊と同時にこれらの世界トップクラスの技術者を養っていく力はウクライナには無くなり、多くの最高レベルの技術者が中国に非常に恵まれた好条件で呼ばれ、中国で活躍することになったのである。

●ウクライナはまた軍艦を建造する能力が非常に高かった。 ソ連の6つの造船所のうち3つはウクライナの黒海沿岸にあった。特にニコラエフ港にある黒海造船所は、ソ連で空母を建造できる唯一の造船所だった。ソ連崩壊後、ウクライナの専門家の多数は、中国に厚遇されて迎え入れられただけでなく、航空母艦も低価格で中国に渡し、改修に関しても全面的に協力したのである(引用以上)。

以上、いくつか拾い上げてみたが、要はソ連崩壊後のウクライナにおいて、かつて世界トップクラスのミサイルや空母の生産に携わっていたハイレベル技術者の多くは、中国に高級で雇用されて大事にされ、中国のミサイル開発や空母建設に貢献したことになる。習近平政権になってからは「軍民融合」国家戦略も推進し始めたので、中国の軍事力はアメリカのペンタゴンが「ミサイルと造船に関してはアメリカを抜いている」と報告書に書くほどまでに至っている。

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