最新記事

新型コロナウイルス

現場の医師が警鐘「オミクロン株で見落とされていたこと」 感染爆発で明るみになった課題とは?

2022年1月28日(金)09時00分
鈴木理香子(フリーライター) *東洋経済オンラインからの転載

オミクロン株に有効な治療薬は?

続いて、治療薬について岡医師に聞いた。

1月14日、ファイザー社が新型コロナウイルスの飲み薬パクスロビドの製造販売承認を厚生労働省に申請した。これが認められれば軽症者に使用できるコロナ専用の治療薬は、ロナプリーブ(中外製薬)、ゼビュディ(グラクソ・スミスクライン)、ラゲブリオ(グラクソ・スミスクライン)、パクスロビドの4種類になる(薬の名前は製品名、製薬企業は製造販売元)。

このうちオミクロン株に有効だとして使われているのはゼビュディ、ラゲブリオ、パクスロビドの3種類だ。前者は点滴投与、後者の2つは経口薬だ。

新しい薬の登場に期待が高まるが、必ずしもゲームチェンジャーになるようなものではない。その理由の1つは、使える人が高齢者など重症リスクのある軽症者で、かつ発症間もない時期に投与するなど、いくつかの決まりがあるためだ。コロナと診断された全員が使える薬ではないのだ。

「加えて、ラゲブリオは有効率が3割程度なので、ゼビュディの7割やパクスロビドの9割に比べて低い。何よりカプセルが大きすぎて、嚥下が厳しい高齢者に飲んでもらうのは厳しいです。実際、フランスではラゲブリオは承認されておらず、アメリカでは3つの薬すべて使えるものの、ラゲブリオは2つの薬が使えない場合に使う、3番手の薬という位置づけです」

パクスロビドは有効性も高く期待が持てる薬だが、ほかの薬との飲み合わせに問題が起きやすいため、薬を多く飲まれている高齢者や持病を持つ方には使いにくい可能性があるそうだ。

最後に。感染状況にせよ、ワクチン接種状況にせよ、新薬にせよ、日々刻々と変わる状況に対し、われわれは何に注目していったらいいのだろうか。岡医師は「新規感染者数、病床使用率などは数字でしかない」としたうえで、こう話す。

「もっとも大事な指標は(医療の)現場です。テレビでも、ネットでも、新聞でもいいですので、現場で働く医療者の声を知ってもらえたら。例えば、病床使用率がいくら低くても、院内クラスターを起こしてしまっていたら、それ以上は患者を受け入れられない。つまりその現場は逼迫した状態なわけです。"ベッドが埋まっていないから大丈夫じゃないか"と、安易に結びつけて考えないでほしいのです」


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米陸軍、ドローン100万機購入へ ウクライナ戦闘踏

ビジネス

米消費者の1年先インフレ期待低下、雇用に懸念も=N

ワールド

ロシア、アフリカから1400人超の戦闘員投入 ウク

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、11月速報値は約3年半ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 9
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中