最新記事

台湾

台湾を見捨て「中国に付いた」ニカラグア...中国の外交圧力は強まっている

As Taiwan Joins U.S. Democracy Summit, It Loses Another Partner to China

2021年12月10日(金)17時36分
トム・オコナー
ニカラグア・中国

「外交関係回復に関する共同声明」に署名したニカラグアと中国の代表(2021年12月10日) Yue Yuewei/Xinhua via REUTERS

<アメリカ主催の民主主義サミットに参加した台湾だが、その直後にニカラグアは台湾から中国に「乗り換える」ことを発表した>

台湾は2021年12月9日、アメリカが主催するオンライン会議「民主主義サミット」に参加し、国際舞台へと踏み出した。だが同時に、台湾は外交関係を結ぶ数少ない国のひとつだったニカラグアを失った。ニカラグアが、台湾と断交して中国と国交を結んだためだ。

中米のニカラグアは12月9日、台湾と断交し、中国と正式な外交関係を結ぶと発表した。その数時間前に、100カ国以上が参加して2日間の日程で行われる民主主義サミットが始まったばかりというタイミングだった。

「ニカラグア共和国は、中国は世界にひとつしかないと認識していることをここに宣言する」。同国外務大臣デニス・モンカダによる声明にはそう書かれている。「中華人民共和国は、中国すべてを代表する唯一の正当な政府であり、台湾は、譲渡できない中国領土の一部である」

中国共産党によって統治されている中国政府は、中国との国交を樹立するためには、対立する台湾の政権との外交関係を断たなければならないとしている。

モンカダは声明で、「ニカラグア共和国は本日、台湾との外交関係を断ち、あらゆる正式な結びつきを終了する」と述べた。

台湾と外交関係のある国は14カ国に

ニカラグアのこの発表により、台湾が外交関係を持つ国はひとつ減って14カ国となった。具体的には、中南米ではベリーズ、グアテマラ、ホンジュラス、パラグアイ。カリブ諸国ではハイチ、セントクリストファー・ネーヴィス、セントルシア、セントビンセント及びグレナディーン諸島。アジア太平洋ではナウル、マーシャル諸島、パラオ、ツバル。アフリカではエスワティニだ。バチカン市国の政府に相当するローマ教皇庁も、台湾と外交関係にある。

台湾の外交部は、ニカラグア政府の決定を受けて声明を出し、遺憾の意を表明した。ニカラグアの長期左派政権を率いるダニエル・オルテガ大統領は、1979年の反米ニカラグア革命で指導者の地位につくと、およそ10年にわたって第一次オルテガ政権を指揮。その後、内戦を経た2007年に大統領に再選され、以降は第二次オルテガ政権を維持している。

台湾外交部は12月10日付けの声明で、「ニカラグアとの外交が途絶えることは非常に遺憾だ」と述べた。「両国は、長年の友情と素晴らしい協力関係を築いて人々に恩恵をもたらしたが、オルテガ政権はそれを軽視した。台湾はこれからも屈することなく、世界のために尽力していく」

ニカラグアの決断は、国際社会での存在力を高めようとする台湾にとって打撃だ。米中間の緊張が高まるなかで、台湾のそうした姿勢は、アメリカとその同盟国など多くの国々の支持を集めてきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中