最新記事

台湾情勢

台湾緊張、飛来した中国機の数だけでなく編成が物語る本気度

Taiwan Official Calls China Situation “Most Severe”in Decades

2021年10月7日(木)17時47分
ローレン・ジエラ
台湾空軍戦闘機

高速道路で緊急離発着訓練をする台湾空軍の戦闘機(2019年5月28日) Tyrone Siu-REUTERS

<日本近海で民主主義陣営が合同演習を繰り広げるなか、中国軍機が大挙して台湾の防空識別圏に進入>

台湾はここ数十年で「最も厳しい」状況に直面している──過去最多に上った中国軍機の接近を受け、台湾の国防トップがそう警告を発した。

今月に入り中国軍機は4日連続で台湾沖の上空を飛行。10月4日には過去最高の56機が飛来し、台湾に揺さぶりをかけた。飛行したのは国際空域だが、台湾国防軍は挑発行動のエスカレートを警戒している。

台湾の邱国正国防部長(国防相に相当)は議会で10月6日、中台間の緊張の高まりは「私が軍隊に入ってからこの40年間で最も厳しい」レベルに達していると発言した。

台湾近海で同盟国と共に合同演習を行ったばかりのアメリカも、中国の行動は地域の「不安定化」を招く、「リスクを伴う」動きだと強い懸念を表明した。

以下はAP通信が伝えた詳細。

攻撃のための編成

すぐにも軍事衝突が起きるようなことはないとの見方が有力だが、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、中国が「必要とあらば武力で台湾を併合する」との脅迫を実行に移せば、大損害を被るのは台湾だけではないと国際社会に訴えた。

「台湾が陥落するようなことがあれば、地域の平和と民主主義的な同盟は壊滅的な打撃を受けるだろう」と、蔡は10月5日発行の米誌フォーリン・アフェアーズに寄稿した論説で力説した。「(台湾陥落は)価値観をめぐる今日のグローバルな競争において、権威主義が民主主義より優位に立ったことを世界に知らしめるシグナルとなる」

中国はこれまでも繰り返し台湾の「防空識別圏」(ADIZ)に軍用機を飛ばしてきたが、これほど大挙して進入したことはない。

軍用機の数以上に重要と見られるのは、戦闘機、爆撃機、早期警戒機から成るその編成だと、国際戦略研究所シンガポール支部の軍事アナリスト、ユーアン・グレアムは指摘する。

「(重要なのは)技術的な洗練度だ。これは攻撃編隊と見ていい。圧力を一段と強化する動きの一環だろう。これまでのように2機の戦闘機が接近し、(中台の事実上の停戦ラインである)中間線をかすめて飛び去るのとは訳が違う。はるかに明白に(攻撃の)意図を見せつけるオペレーションだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米サステナブルファンド、1─3月は過去最大の資金流

ビジネス

北京市、国産AIチップ購入を支援へ 27年までに完

ビジネス

デンソー、今期営業利益予想は87%増 合理化など寄

ビジネス

S&P、ボーイングの格付け見通し引き下げ ジャンク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中