最新記事

変異株

オミクロン株は乳幼児へ高いリスクもたらす? 南アフリカで2歳以下の入院目立つ

2021年12月2日(木)19時12分
オミクロン株のイメージ

南アフリカで新型コロナウイルスの新変異株オミクロン株の感染者が多い地域から集めたデータに基づくと、2歳未満の子どもの入院患者数が多く、オミクロン株は乳幼児に高いリスクをもたらすのではないかとの懸念が生じている。写真はオミクロン株のイメージ。11月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

南アフリカで新型コロナウイルスの新変異株オミクロン株の感染者が多い地域から集めたデータに基づくと、2歳未満の子どもの入院患者数が多く、オミクロン株は乳幼児に高いリスクをもたらすのではないかとの懸念が生じている。

南アの科学者らは、オミクロン株と乳幼児の入院数の多さに直接因果関係があるとはまだ確認しておらず、別の要素が介在している可能性が残っていると話した。この問題で分かっていること、なお不明なことを以下にまとめた。

懸念の原因

南アフリカ国立伝染病研究所(NICD)が公表したデータによると、首都プレトリアを含むツワネ市都市圏で、11月14─28日に新型コロナウイルス感染症として入院した452人中、2歳未満の子どもは52人。これは他のどの年齢グループよりも多い。

ただ年齢グループ別の人口を考慮に入れると、入院のリスクは60歳超の方が大きくなる。

乳幼児の入院とオミクロン株の因果関係は成立したか

まだ分からない。南アでは遺伝子解析の能力が限られるため、陽性者の検体のごく一部しか提出されていない。NICDの科学者の話では、つまり入院した乳幼児がオミクロン株に感染したのかどうか確かめることが不可能だ。

このデータに含まれる乳幼児全員が新型コロナに感染しているかについても、不透明性がある。全員が新型コロナの検査を受けるわけではないからだ。

実際上の理由から、呼吸器疾患の症状がある乳幼児は新型コロナウイルス感染症として扱われるが、インフルエンザなど他の病気の症状である可能性もある。

入院した乳幼児の重症度

データからは、入院した0─4歳の子どもの29%が重症化していることが分かる。この比率は他の幾つかの年齢グループと変わりがなく、60歳超の患者の重症化率に比べると著しく低い。

4歳以下の入院患者のうち死亡したのは1%。ただこのグループの入院総数は70人で、1%という数字がどの分母に基づくのかはっきりしていない。

NICDはこの件でロイターの問い合わせには答えず、今週中に子どもの入院に関する新たな報告書を公表すると説明した。

オミクロン株の影響を警戒すべきか

乳幼児の入院患者の多さを警戒するべきかどうか質問されたNICDの臨床微生物学者アン・フォン・ゴットベルク氏はロイターに「まだ早い」とくぎを刺した。

フォン・ゴットベルク氏は「子どもの患者の一部はオミクロン株出現前に入院した事実があるようだ。われわれはデータを非常に注意深く点検しているほどの懸念を持っているとはいえ、現段階で乳幼児の入院患者数をはっきりオミクロン株と結びつけられるとまで確信できない」と語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

ウクライナ「和平望むならドンバス撤収必要」=ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中