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ワクチン拒否者への「差別」は正当か? 肯定派・反対派の言い分

2021年10月1日(金)08時18分
ベンジャミン・ウィッテス(ブルッキングス研究所上級研究員)、リズ・ウィーラー(政治コメンテーター)

でも、雇用主が従業員にワクチン接種を義務付けたら? そして、あなたに今の健康状態や過去の病気のせいでワクチンを打てない正当な理由があり、あるいは信仰上の理由があるとしたら? あなたはそれを雇用主に告げなくてはならない。法律上の問題はないとしても、これは露骨なプライバシーの侵害であり、昔ながらの身障者差別とほとんど変わらない。

なんらかの疾患があり、でもそれを他人に知られたくない、職場の同僚や上司に知られたくないと思う人は大勢いる。個人の医学的な情報だから伏せておきたいと思う。でも会社でワクチン接種を義務付けられたら、その情報を雇用主に伝えなければならなくなる。そうすると今度は昇進などで差別されたり、妙に特別扱いされたりする恐れが生じる。プライバシーを暴かれたと感じる人もいるだろう。

信仰上の理由でワクチン接種を拒否する人にも、きっと同じことが起こる。ふつう、職場では信仰の話なんてしない。政治の話も、できることなら避けたい。熱い議論になって職場の同僚や上司と意見が異なれば、仲間外れにされかねないと心配するからだ。

そういう心配が、それぞれの職場で現実になりかけている。ワクチン接種は義務だと言われたら、接種できない従業員はその理由を明らかにしなければならない。自分の最も個人的な信念や健康上の問題を、職場で公表せざるを得なくなる。

それが正しい道だとは、私は思わない。倒産して連邦政府に救済され、補助金で生きている航空会社などが従業員にワクチン接種を義務付けている。民間企業の自主的な判断というのは上っ面だけで、実質は政府の強制に等しい。

こうやって、バイデン政権はみんなにワクチンを打たせようとしている。そのために企業を政府の手先として使っている。ニューヨーク州政府も、店内での飲食やジム通いの際にワクチン接種証明を提示することを呼び掛け、それを守らせる責任を企業に押し付けた。政府の代わりに、民間企業にやらせる。これが彼らの本性だ。

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