最新記事

ワクチン

ワクチン拒否者への「差別」は正当か? 肯定派・反対派の言い分

2021年10月1日(金)08時18分
ベンジャミン・ウィッテス(ブルッキングス研究所上級研究員)、リズ・ウィーラー(政治コメンテーター)
新型コロナワクチン

YULIA REZNIKOV/GETTY IMAGES

<新型コロナワクチン接種の義務付けを民間企業の判断に委ねたバイデン米政権。プライバシーの侵害か、感染予防に不可欠か、それぞれの言い分は>

接種の義務付けには正当な意味がある

ベンジャミン・ウィッテス(ブルッキングス研究所上級研究員)

相手がまだワクチン接種を受けていないと知っていれば、私はその人に対面で会うつもりはない。リモートでなら会う。その人を罰するつもりも非難するつもりもないが、私は自分がウイルスの運び屋になるリスクを冒したくない。だから、予防接種を受けていないと公言する人には面と向かって会いたくない。

もちろん例外はある。何らかの医学的な理由でワクチンを打てない人や、まだ法的に接種を認められていない子供たちは別だ。ただ、私自身が自分に課している義務はこうだ。ウイルスの運び屋となることを自ら選んだような人とは、絶対に対面で会ってはいけない。

米連邦政府が法律でワクチン接種を義務化しないことには、それなりの理由があると思う。法律で強制すれば、反ワクチン派が一段と過激化しかねない。だから私は、民間の企業や団体による接種義務化を推奨しつつ、政府による強制はしないというジョー・バイデン大統領のやり方に必ずしも反対しない。

ただし私は、法律で全国民にワクチン接種を義務付けることにも反対しない。そういうことは単に方法論的な問題にすぎない。大事なのは、一刻も早く国民の大半にワクチン接種を受けさせることだ。そのために法的な義務化が有効なら、それはそれでいいと思う。

ご承知のように、自律・自立した人間としての私には誰と付き合うかを決める権利があり、ワクチンを接種しない人を拒む権利がある。これを差別と言うなら、確かに差別だろう。しかし、法的な意味の不当な差別には当たらないと思う。

私は個人的なポリシーとして、ワクチンの未接種者を区別することにした。私の勤めている研究所も同じポリシーを採用している。あなたがまだワクチン接種を受けていなければ、ブルッキングス研究所の建物に入ることは許されない。

個人としての私のこうした権利が認められ、推奨されてもいるのに、私の勤務先が同じ権利を主張するのはおかしいと言われる。政府が私の勤務先に同じ権利の行使を勧めるのは無責任であり、不当だとも。それはおかしい。

私にもブルッキングス研究所にも法的な人格が認められており、差別に当たらない範囲で区別をする権利が認められている。そうであれば、ブルッキングス研究所やユナイテッド航空をはじめとする多くの企業が従業員のワクチン接種義務化に踏み切ることのどこが悪いのか。それを大統領が称賛することの、どこが悪いというのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア国防相、ウクライナ作戦向け武器供給拡大を指示

ワールド

メキシコ、第1四半期GDPは前期比0.2%増 前年

ビジネス

テスラの充電器部門閉鎖、自動車業界に動揺 GM「状

ビジネス

午後3時のドルは157円後半で底堅い、FOMC後の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中