最新記事

リモート教育

オンライン授業の拡大を妨げる家庭のIT環境格差

2021年10月7日(木)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
リモート学習をする子供

地域によっては7割の学校で、家庭の周辺機器の不足がリモート授業の支障となっていた kohei_hara/iStock.

<全国的に各家庭でのPC端末、通信環境の不足がオンライン授業の支障となっていて、都市部と地方での格差も大きい>

昨年は新型コロナウイルスの影響で、全国の学校が一斉休校を迫られた。それに伴いオンライン授業などが導入された。初めての試みだったが、なかなか一筋縄ではいかなかったようだ。円滑な実施を妨げたのは、十分な通信環境がない家庭が少なくなかった実態だ。

これを受け、今年の『全国学力・学習状況調査』では、2020年4月以降の臨時休校中、家庭でのICT(情報通信技術)学習に際して支障となったことを問うている。①家庭の端末(PC等)の不足、②家庭の周辺機器(カメラ等)の不足、③家庭の通信環境(無線LAN等)の不足、ということがオンライン教育の支障となった学校はどれほどあったのか。<図1>は、「当てはまる」と答えた小学校の割合だ。公立・国立・私立に分けて示している。

data211007-chart01.jpg

量的に多い公立を見ると、支障になったという学校の割合は、家庭の端末の不足が48.0%、家庭の周辺機器の不足が52.0%、家庭の通信環境の不足が41.5%、となっている。オンライン教育をしようにも、PCがない、カメラがない、Wi-fiがない家庭が多く、困り果てたという学校が少なからずある。

だが、ごく限られた階層(約1%)の子弟が通う国立小・私立小となると、これらのリソースの不足がネックになったという学校は、公立と比較してずっと少ない。身もふたもないが、在籍している児童の家庭環境の違いが出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、2日に予算教書公表 環境・対外援助など

ワールド

イスラエル、シリア大統領官邸付近を攻撃 少数派保護

ビジネス

JAL、今期の純利益7.4%増の見通し 市場予想上

ワールド

NZの10年超ぶり悪天候、最悪脱する 首都空港なお
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中