最新記事

巨大彗星

直径155キロの巨大な彗星が、350万年ぶりに太陽へと接近中

2021年10月1日(金)17時15分
松岡由希子

NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva

<太陽系外縁部の「オールトの雲」から直径155キロと推定される巨大な彗星「ルナーディネッリ・バーンスティン彗星(C/2014UN271)」が約350万年ぶりに太陽へと接近しつつある>

太陽系最外縁部の天体群「オールトの雲」から、直径155キロと推定される巨大な彗星「C/2014UN271」が約350万年ぶりに太陽へと接近しつつある。

一般的な彗星の質量に比べて1000倍重い

この彗星は、南米チリのセロ・トロロ・汎米天文台のビクターM.ブランコ望遠鏡に搭載された「ダークエネルギーカメラ(DECam)」で観測したデータをもとに、米ペンシルバニア大学の天文学者ペドロ・ベルナーディネッリ博士とゲイリー・バーンスティン教授が2021年6月に初めて発見したことから、「ベルナーディネッリ・バーンスティン彗星」と名付けられている。

ベルナーディネッリ・バーンスティン彗星は、アメリカ国立科学財団(NSF)国立光学赤外線天文学研究所(NOIRLab)の研究プロジェクト「ダークエネルギー調査(DES)」が2013年から2019年までに観測したデータから見つかった。

ベルナーディネッリ博士とバーンスティン教授がスーパーコンピュータを用いて観測データを解析した結果、この彗星が32回検出されていた。ベルナーディネッリ博士とバーンスティン教授らの研究チームは2021年9月23日、一連の研究成果をまとめた査読前論文を「arXiv」で公開している。

ベルナーディネッリ・バーンスティン彗星は、一般的な彗星の質量に比べて1000倍重く、既知の彗星で最大とされる直径100キロのサラバット彗星(C/1729P1)よりも大きい。

2031年に太陽に最も近づく

ベルナーディネッリ・バーンスティン彗星は4万400AU(天文単位:約6兆6000億キロ)の遠日点から太陽に向けて移動している。

2014年8月時点で29AU(約43.5億キロ)であった太陽との距離は、2021年5月に20.1AU(約30.15億キロ)にまで縮まった。2031年には土星の軌道のやや外側の10.97AU(約16.5億キロ)で太陽に最も近づく、近日点に到達する見込みだ。太陽からの距離が18AU(約27億キロ)となった350万年前の近日点通過よりもさらに太陽に接近する。

ベルナーディネッリ・バーンスティン彗星の継続的な観測は、太陽系の外側を取り巻いていると考えられている「オールトの雲」や太陽系の形成の解明などに役立つと期待されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中