最新記事

宇宙旅行

スペースX「クルードラゴン」、初の「オール民間人」のスペック

Space X Launch of 4 Civilians: Who Are They, What Training Did They Get

2021年9月16日(木)15時00分
アレックス・ルーハンデー
スペースドラゴンのクルー

やはり只者ではない4人。右から二人目が船長のアイザックマン(9月15日) INSPIRATION 4/REUTERS

<大富豪実業家が費用を全額負担して人選もしたクルーの顔ぶれと想像以上に厳しい訓練とは?>

9月15日、イーロン・マスク率いる宇宙開発企業のスペースXが史上初めて、民間人だけを乗せた宇宙船を打ち上げた。宇宙飛行士としての経験を持たない4人の民間人は、今後3日間の宇宙旅行を楽しむことになる。

4人を乗せたスペースXの宇宙船「クルードラゴン」は、自動操縦で高度約575キロメートルに到達し、地球の軌道を周回する。ヴァージン・ギャラクティックのリチャード・ブランソンが達成した高度約85キロメートル、アマゾンのジェフ・ベゾスが達成した高度約105キロメートルよりも遠くに到達することになる。

船長は、米決済情報処理企業シフト4ペイメンツの創業者であるジャレド・アイザックマン(38)。クルー全員の運賃も含め、打ち上げにかかる費用を負担した彼はAP通信に対し、「今回のミッションは、一般の人が宇宙に冒険に行ける未来に向けた第一歩になると語った。

アイザックマンは宇宙飛行の経験はないが、2009年には軽量ジェット機で世界一周の最速記録を達成している。これまでにさまざまな航空機での飛行経験があり、複数の戦闘機の操縦ライセンスを取得している。7月の本誌のインタビューでは、「クルードラゴンは、これまでに飛ばしたことがあるジェット機とよく似ている」と述べていた。

がんサバイバーが米史上最年少で宇宙へ

今回の宇宙旅行に備えて、アイザックマン率いるチームは3月から、宇宙飛行のための特訓を受けた。宇宙・天文学のニュースサイト「スペース・ドットコム」によれば、航空宇宙研究訓練センターで遠心機に乗り、重力加速度(G)を体験する訓練などが行われた。またチームの絆を深めるために、エクストリームな地形の場所で登山を繰り返し、その後はフライト・シミュレーションを使って、通信障害が発生した場合に備えてクルードラゴンの手動操縦の練習をした。

アイザックマンは本誌とのインタビューの中で、今回のチームのメンバーのひとりは、NASAの「厳格な健康チェック」の下では宇宙飛行を許されなかったであろう人物だと述べ、その意味でも今回のミッションは画期的だと語った。

セント・ジュード小児科病院への寄付を募ることが、今回のミッションの目的のひとつであることから、アイザックマンはスペースドラゴンの4人分の座席のうち1つに、同病院の元患者でがんサバイバーのヘイリー・アルセノー(29)を招待した。10歳の時に骨肉腫と診断された彼女は、片足が義足だ。現在はセント・ジュード小児科病院で医療助手として働いており、宇宙に飛び立つ最年少のアメリカ人となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中関税合意、中国内に懐疑的見方 国営メディアが評

ワールド

ハマス、イスラエル系米国人の人質を解放 イスラエル

ビジネス

JPモルガン、中国GDP予想を上方修正 対米関税引

ビジネス

FRB政策対応の必要性低下、米中関税引き下げで=ク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中