最新記事

署名キャペーン

Amazonのジェフ・ベゾスは地球に還ってこないで...署名が14万筆を突破

2021年7月2日(金)16時00分
青葉やまと

宇宙企業ブルーオリジンのクルーカプセルのモックアップに乗るベゾス氏 REUTERS/Isaiah J. Downing

<7月に宇宙ロケットで旅立つベゾス氏は、もうそのまま宇宙にいれば良い......。こんな署名活動が話題を呼んでいる>

「ジェフ・ベゾスの地球帰還を許すな」。このように銘打った過激な署名キャンペーンを米北東部ミシガン州の住民が立ち上げ、14万人を超える賛同者を集めている(7月2日現在)。署名活動はオンラインの署名収集サイト『Change.org』上で現在も継続中だ。

発起人の「リック G」を名乗るユーザーは署名活動のページにおいて、「億万長者など存在すべきでない...地球上にも、宇宙にも。しかし後者を選択したのであれば、ずっとそこに留まるべきだ」と述べ、痛烈な批判を展開している。6月10日に公開されたこのキャンペーンは、およそ2週間で10万人の賛同者を集め、3週間で13万人を超えた。

リック G氏の怒りは収まらない。6月24日には署名ページに長文を追加投稿し、「彼は金銭的にも感情的にも疑いの余地なく人類の大多数から隔たっているだけでなく、私たちを人間たらしめるものからも遠い存在となった。そしていま、個人で出資するロケットで地球の大気圏外へと出ることにより、完全な隔離を実現しようとしている」などと皮肉たっぷりに綴る。

Amazon共同創設者として知られるベゾス氏は、航空宇宙を手がける民間企業「ブルー・オリジン」の設立者でもある。今年7月20日に同社が打ち上げる宇宙船「ニュー・シェパード」での有人飛行に加わり、計15分足らずの飛行時間のなかで数分間の無重力状態を体験する計画だ。

貧富の差に不満が爆発

リック G氏は、これまで崇高な目的を持って実行されてきたロケット開発を個人の満足感を満たすために行うことを批判したうえで、地球には食糧不足や医療問題、清潔な水さえ手に入らない人々など、さまざまな課題が残されていると指摘する。山積する問題の解決にこそ資金を投じるべきではないかというのが氏の主張だ。

アメリカ国内では医療制度の崩壊による破産も問題となっており、薬を手に入れるために食費を削らなければならなかったり、家を失ったりという家庭も多い。「どれだけ我慢すれば限界なのか、私たちは自問すべきだ」とリック G氏は述べ、一部の富豪に財が集中する社会の不合理を訴える。

貧富の差は年々拡大しており、いまや米最大の社会問題のひとつとなった。ブルームバーグは2019年の記事において、経済格差は拡大傾向にあり、現在ではアメリカの納税番付の上位0.1%が全国民の富の20%を占めている、との調査結果を伝えている。一方、社会の対極では貧困がまん延しており、下位半分の人々を合計すると、その純資産の額はマイナスになるという。

リック G氏は、「億万長者たちは依然として労働階級の人々を、突如として金に糸目をつけなくてよくなるエリート階級への踏み台として利用し、文字通り地球に置き去りにしてパンくずの奪い合いをさせようとしている」 と糾弾している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者32人に、子ども14人犠牲 

ビジネス

アングル:プラダ「炎上」が商機に、インドの伝統的サ

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中