自民党総裁選、金融市場からは「河野首相」の誕生を望む声が多数
The Markets Back Kono
ただし市場は、消費税と法人税の税率変更には敏感に反応するだろう。中国との関係で緊張が高まるのも困る。それでも、とベイルは言う。日本は今日まで「米中の地政学的緊張の間で巧みにバランスを取ってきた。米中とも日本とは緊密な関係を維持したいはずだ」。
イギリスの調査会社キャピタルエコノミクスも、新型コロナの新規感染者数が減り、ワクチンの接種率が上昇するのは自民党に有利とみる。9月20日付の同社の報告書で、日本担当のトム・リアマウスは「総裁選で誰が勝とうと、第4四半期には国内の行動制限を緩和でき、景気回復の波に乗れる」と述べている。
さらにリアマウスは、「安倍晋三の仇敵・石破茂は労働者の賃金より企業利益の上昇を優先するアベノミクスを批判してきた。どうやら河野は石破の主張を受け入れたらしく、『企業の利益より家庭の所得を押し上げる政策』に重点を移したいと述べている」とも指摘している。
「利益の(従業員への)再分配を増やす企業には法人税率の引き下げも考慮すると、河野は示唆している。他の総裁候補と同様に一段の景気刺激策も約束しており、再生可能エネルギーと高速通信規格5Gの普及に注力すると思われる。それは景気回復への追い風となる。第4四半期のGDPはコロナ以前の水準に戻り、来年半ばにはコロナ以前の成長軌道に戻るものと期待している」
構造改革、なお進まず
退陣する菅義偉首相の目指した改革は道半ばだ。当然、次期政権も官僚機構や既得権益の壁と戦い、公的債務の増大や少子高齢化、地政学的な脅威などに対処しつつ、この国の生産性を高めていかねばならない。
国内の財政タカ派は、また消費税率の引き上げを求めてくるだろう。だが過去に消費税率を引き上げたときは必ず景気後退を招いていた。
2023年4月には日銀総裁の任期が満了となる。新首相が誰を次の日銀総裁に選ぶかで、日銀の金融政策の行方は左右される。現職の黒田東彦総裁はアベノミクスに呼応して「異次元」の金融緩和を続けてきたが、次期総裁が政策を大胆に転換すれば、市場はそれなりの対応を迫られるだろう。日銀が株や社債の購入を減らすかどうかも気になるところだ。
アベノミクスについて、IMFは金融の緩和や財政赤字の縮小、雇用と女性就業率の改善は評価している。しかし昨年2月には、日本の構造改革の遅れに懸念を表明している。現役世代の人口は激減する見込みなのに労働市場は硬直しており、製造業でもサービス業でも生産性の向上が見込めないからだ。